時代や顧客ニーズの変化に合わせて、ブランドを再構築・再定義し、魅力をよみがえらせるのが「リブランディング」です。パッケージデザインを変えたり、ビジネスモデルそのものを変化させたりすることで、V字回復している企業があります。日経クロストレンドの記者が解説します。

(写真/Shutterstock)
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 時代や顧客ニーズの変化に合わせて、ブランドを再構築・再定義し、魅力をよみがえらせるのが「リブランディング」です。パッケージデザインを変えたり、ビジネスモデルそのものを変化させたりすることで、V字回復している企業があります。

 プロントコーポレーション(東京・港)は2021年4月に、同社の飲食チェーン「プロント」を昼は働く20~30代のミレニアル世代に向けたカフェ、夜はすべてのビジネスパーソンをターゲットとした新業態の「キッサカバ」(喫茶+酒場)と区別し、二面性を打ち出したリブランディングを行いました。

 オフィス街やその周辺の駅近くに多く出店するプロントは、コロナ禍による外出自粛やリモートワークの広がりのあおりを受け、20年の売り上げは前年比約50%まで落ち込みました。20年4月の一度目の緊急事態宣言が明けても客足が戻らないなど、コロナ禍だからこその課題が浮き彫りになったといいます。

 文具メーカーのヤマト(東京・中央)が開発・販売する布製の粘着テープ「OUTDOOR TAPE(アウトドアテープ)」は、生産中止になった商品をリブランディングしてよみがえらせた商品です。昨今のアウトドアブームに乗り、デザインやパッケージを大幅に見直して20年7月に発売すると予想以上の売れ行きを記録しました。

 コロナ禍ではリモートワークが普及し、外出を控える人が増え「おうち時間」がこれまでより長くなった人が多いでしょう。時代の変化や流れに恐れず、アップデートさせていくことが大事なのかもしれません。

「選ばれない店」からの脱却 プロントのリブランディング戦略


これぞリブランディングの理想型 10年前の廃盤テープが大復活


リブランディングで売り上げ9倍 高額ジュエリーD2Cの戦略


ネーミングで命を吹き込む

伊勢志摩「金魚真珠」 売れない真珠に命与えたネーミング

 伊勢志摩産の養殖真珠を使ったジュエリーを製造販売するサンブンノナナ(三重県伊勢市)。その新商品「金魚真珠」が静かな人気だ。従来は売り方に困っていた、いびつな形の真珠の中から、金魚の尾ひれのような突起が生えたものを金魚真珠と名付け、新たな価値を与えた。SDGs(持続的な開発目標)の目標12「つくる責任 つかう責任」、目標14「海の豊かさを守ろう」の実行でもある。


「闇落ちとまと」「越冬トマト」 ユニークネーミング野菜が売れる

 商品について画像とテキストを使って説明できる内容は限られるが、顧客の潜在ニーズをくみ取ったり、情緒的な価値をうまく表現したりしたネーミングは、それだけで豊かなコミュニケーションを実現できる。商品に対する顧客の関心を一気に高める要素となり得る。Twitterで話題となった「闇落ちとまと」はその好例だ。


多様性をどう表わす? 表現をゼロから見直した花王、ファミマ

 人の性別や年齢、国籍、価値観、ライフスタイルなどを互いに認め合う多様性が叫ばれる時代は、今までとは異なる表現方法が必要になる。ブランドや商品のネーミングにおいても同様だ。米国や日本で何が起こっているかを取材した。


BtoBブランド再生術

王者に勝つブランドの築き方 ポジショニングで領域を明確化

 リフレクターブランド「Ref Lite(レフライト)」を例にBtoB(企業向け)ブランド再生術を学ぶ本連載。前回は、「顧客インサイト」をいち早くつかむことで競合が見抜けていない顧客の潜在ニーズを見つけ、価格競争などのレッドオーシャンに陥るのを避けられることを説明した。今回はBtoBブランディングにおいて重要な「競合との差異化」の方法を説明していきたい。


大企業との戦い方 リブランディングで復活した老舗素材メーカー

 「ブランディング」と聞くと「大企業だけがやるもの」「BtoC(消費者向け)ブランドが行うもの」というイメージはないだろうか。そう思っていると、大きな機会損失をしている可能性が高い。この連載では、リブランディングによって、倒産の危機から脱したBtoB(企業向け)ブランドを題材に、BtoBブランド再生の極意を伝える。少額予算でも勝てる、BtoBブランドの再生術だ。


大企業にも勝てる! 自分たちで気づかない「自社の強み」発見法

 連載第1回は、なぜBtoB(企業向け)事業会社にブランディングが必要なのかを説明した。今回からは倒産の危機にひんした中小BtoBブランドである「Ref Lite(レフライト)」が事業譲渡先のMipoxの支援の下、リブランディングによってどのように復活していったのか、実例を基にひも解いていく。徹底したブランド分析により、最大の競合であるスリーエム(3M)に勝てる3つの強みを見つけ出した。


マツキヨのリブランディング

「マツキヨ」らしさを取り戻せ リブランディング始動の舞台裏

 2016年度に売上高で22年ぶりに首位から陥落したマツモトキヨシホールディングス。ユニークな広告宣伝活動や店舗設計で“指名来店”を誘ったドラッグストアの雄は、岐路に立たされている。創業家で常務取締役を務める松本貴志氏の号令の下、もう一度、強みである「楽しさ」「驚き」「斬新さ」のあるブランドへの回帰に乗り出した。1兆円企業を目指し、反転攻勢にのろしを上げたマツキヨからブランド再生術を学ぶ。


マツキヨPBバカ売れ 成功への開発プロセス

 SNSで話題を呼んでバカ売れとなったエナジー飲料から、世界的な権威のあるデザイン賞を総なめにするトイレットペーパーまで、幅広いジャンルでヒット商品を生み出しているマツモトキヨシホールディングス(HD)のPB(プライベートブランド)「matsukiyo」。特集の第4回ではリブランディングに成功したマツキヨのPB戦略を大解剖し、成功への開発プロセスの全容を明らかにする。


マツキヨ松本常務が語る 小売店のブランドを再生させる方法

 PBの刷新を足掛かりに、リブランディングを進めるマツモトキヨシホールディングス。最終回はマツキヨHD常務取締役の松本貴志氏のインタビューを掲載する。リブランディングは、松本氏がマツキヨから「革新性」や「卓越性」が失われていることに危機感を覚えたことが発端となった。そこで、松本氏に経営戦略におけるブランドの重要性や、PBのリブランディングで苦労した点、それを乗り越えるために取り組んだ施策などについて聞いた。

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