プロセス(過程)をマーケティングに生かすケースが相次いでいます。『プロセスエコノミー』(幻冬舎)と題した書籍も販売されており、注目度の高さがうかがえます。その背景として、「プロセスエコノミー」という言葉の名付け親で起業家のけんすう氏は、さまざまな製品やサービスが高いレベルにあり差が見出しづらいことを指摘します。日経クロストレンドの記者が解説します。

(写真/Shutterstock)
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 プロセス(過程)をマーケティングに生かすケースが相次いでいます。『プロセスエコノミー』(幻冬舎)と題した書籍も販売されており、注目度の高さがうかがえます。その背景として、「プロセスエコノミー」という言葉の名付け親で起業家のけんすう氏は、さまざまな製品やサービスが高いレベルにあり差が見出しづらいことを指摘します。

 そうした中で差別化していく手段として用いられるのが、プロセスというわけです。例えば、ドミノ・ピザ ジャパンは2021年5月、「世界一透明なドミノ・ピザ」をコンセプトにした店舗をお台場にオープンしました。「世界一透明」という通り、店舗の大部分がガラス張りになっており、ピザの生地作り、調理、焼き上がる瞬間、配達に出るまでの一連の様子が外からも見られるようになっています。ピザ作りの工程を見せることで、顧客からの信頼感を獲得しつつ、体験を提供するということです。

 商品の開発過程に顧客を巻き込んでいくアプローチもあります。完全栄養食ブランド「BASE FOOD」では1万人を超える顧客コミュニティーを運営し、その顧客の声を商品開発に生かしています。例えば、商品化前の試作品を顧客に送り、そのフィードバックを基にクッキーの味を決めたケースがあると言います。

 そうしたアプローチは、タレントD2Cでも見られます。元アイドルでインフルエンサーのゆうこす氏が手掛けるプロテイン「La protein(ラプロテイン)」では、プロテインの味を決める際にInstagramを通じてアンケートを実施。そこで得られたファンの声を参考にしたと言います。ゆうこす氏によれば、「インフルエンサー×健康食品なんて、ちょっとうさん臭いかもしれない」という視点を意識し、商品開発の過程をInstagramで見せることでファンの信頼感を醸成したそうです。

 D2Cブランドなども加えて、多くの商品やサービスがあふれる今の時代。そこでいかに差別化し、顧客に振り向いてもらえるか。そのヒントは、プロセスを開示して透明性あるコミュニケーションをしていくことにありそうです。

「プロセスエコノミー」の本質とは 名付け親と著者に聞く


ドミノ・ピザは調理も宅配も全見せ 世界一透明な店もオープン


プロセス透明化でスーパーの魚が売れる 鮮魚取引アプリの挑戦


プロセスマーケティング最前線

プロセスエコノミーは「ファンから」 フィルターバブルに注意

 話題の「プロセスエコノミー」とは何か。前回はその名付け親である連続起業家のけんすう(古川健介)氏と書籍『プロセスエコノミー』の著者であるIT批評家の尾原和啓氏に、プロセスエコノミーの本質について聞いた。今回はプロセス(過程)を開示するうえで意識すべきことを探っていく。


BTSが先陣 なぜ韓国エンタメでプロセスエコノミーが進んだか

 プロセスを見せることでどの程度受けるか予測できれば、どのくらい制作費をかけられるかが事前に分かる――。国際社会文化学者として韓国のエンターテインメントを研究しているカン・ハンナ氏が韓国エンタメ業界で進むプロセスエコノミーの現状と背景を語った。


チョコのスタートアップ「ダンデライオン」が挑む全情報公開

 米サンフランシスコでIT起業家が創業したダンデライオンチョコレートは、材料の購入先だけでなく、購入量やコストを公開している。消費者に原材料からどのようにこだわっているのかを知らせるのと同時に、カカオ豆農家の情報格差の是正を目指している。


プロセスに顧客を巻き込む

小学館がゆうこすとD2C SNSで開発工程を見せてうさん臭さ払拭

 小学館(東京・千代田)の女性向けファッション誌「CanCam」と、“ゆうこす”で知られるインフルエンサーの菅本裕子氏が共同でプロテインのD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド「La protein(ラプロテイン)」を立ち上げた。初回販売で用意した「ゆうこすプロデュース プロテインおためしアソートBOX」はすぐに売り切れるほどの好調ぶり。商品開発段階からInstagramで積極的に情報発信して開発に込めた熱量を伝え、信頼を獲得したことが成功のポイントだ。


顧客1万人が開発に参加するベースフード 1000万食突破の原動力

 ベースフード(東京・目黒)が展開する完全栄養食ブランド「BASE FOOD」は、シリーズ累計販売数が1000万食を突破するなど堅調だ。同社は1万人を超える顧客コミュニティー「BASE FOOD Labo」を運営。同コミュニティーでは会員を研究員と呼び、商品開発プロセスを開示して参加してもらう。2021年6月に発売した完全栄養クッキー「BASE Cookies」もそうして開発された。顧客と共創するものづくりが成長の源泉になっている。


小柄な女性向けアパレルD2C 商品1点から1年で月商5000万円に

 身長155cm以下の女性を対象としたアパレルD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド「COHINA」は、Instagramを活用した顧客との関係構築に長けている。毎日のライブ配信で取得した意見を商品開発にも活用。商品1点の創業から約1年で月商が5000万に達するなど、順調な成長を遂げている。


信頼を得るプロセス開示

創業142年の窯元がインスタライブ オンラインでも高額品が売れる

 対面販売を主軸としてきた伝統工芸品。コロナ禍を経て、ライブ配信やクラウドファンディングを駆使し、より消費者と“密”に交流をする工房も出てきた。一般的なECサイトでは伝え切れない作り手の思いや商品に注ぎ込まれた技術などを深掘りして伝え、熱狂的なファンを生み出し、次の飛躍を目指す企業に話を聞いた。


リブランディングで売り上げ9倍 高額ジュエリーD2Cの戦略

 縮小するジュエリー市場にD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)のビジネスモデルを取り入れ、これまでとは異なる“体験”を提供するのがHELICAL CHORD(ヘリカルコード、東京・渋谷)だ。予算やデザインで選ぶのではなく、ストーリーでものを選ぶことを提案し、高額ジュエリーの近寄り難いイメージを払拭するブランドを目指す。


D2Cこそライブコマース 顧客との対話で購入の動機を生み出す

 ブランド設立に必要な機能を提供するデジタルのプラットフォーマーの登場により、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)が増殖中。特集第8回では「販売」「マーケティング」機能を提供する企業を紹介する。ライブコマースや支援者の貢献度可視化ツールでD2Cを支える。