デザインの考え方を企業の競争力につなげる「デザイン経営」を採用する動きが加速している。富士通などは、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の新たなビジネス手法として重視。全社員にデザイン経営の基礎といえるデザイン思考を身に付けさせようとしている。
デザインの考え方を企業の競争力につなげる「デザイン経営」を採用する動きが加速している。富士通などは、DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の新たなビジネス手法として重視。全社員にデザイン経営の基礎といえるデザイン思考を身に付けさせようとしている。先行きが不透明な時代には、今までにない発想や働き方が求められるからだ。単に先進的なデザインを取り入れて商品を開発することがデザイン経営ではない。
最近はデザインに関心を抱く中小企業の経営者が増えてきた。過大な設備投資が不要で、ちょっとしたアイデアや工夫で他社と差異化でき、イノベーションやブランディングにつながるという期待がある。日本デザイン振興会は、デザイン経営が企業の業績にどれくらい貢献しているかを示すため、大規模なアンケート調査を実施し、2020年11月に結果を発表した。するとデザイン経営に積極的な企業ほど成長力が高い傾向が見られたという。
デザイン経営を実現するには、デザイン思考を学ぶのが分かりやすい。デザインやデザイナーの考え方を理解するためだが、デザイン思考にはさまざまな解釈があり、理解にしにくいのも事実。重要な点は、「デザインができるまでのプロセスを学ぶ」のではなく、「なぜデザイナーは、そうした発想をするのか」という、まさに思考法にある。考え方さえ分かれば、いろいろな場面に応用できるはずだ。

こんなクライアントは嫌だ! デザイン経営で起こる問題と対処法


先進企業はどう動いたか

DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の生き残りをかけ、デザイン思考を全面的に採用し、「全社DXプロジェクト(Fujitsu Transformation:フジトラ)」を2020年10月から本格的に開始しているのが富士通だ。推進役となるのがデザイナーで、デザイン思考を社内に浸透させるため、デザイン組織も見直した。ここまで徹底的に企業変革を狙う企業は珍しい。他社にも参考になるはずだ。

現在、日本内外で42の施設を運営する星野リゾート。各施設は斬新なコンセプトはもとより、デザインにも定評がある。そこには星野佳路代表のどのような戦略があるのか。4回にわたり、星野リゾートのデザイン戦略をひもといていく。

コロナ禍を機に、モノの買い方やモノを選ぶ価値基準が大きく変化している。外出自粛でネット通販が急増しただけでなく、暮らし方や生き方まで考え直すきっかけとなり、安心や憧れよりも、共感できるかどうかを重視する人が増えつつある。共感消費にいち早く取り組み、コロナ禍でもネット通販が好調な「中川政七商店」の取り組みにフォーカスし、共感消費を生む仕組みを探った。
中小企業こそ大きなチャンス

イノベーションには「開発には多額の投資が必要」といったイメージを抱きがちだが、潤沢な経営資源・体力を持たない中堅中小企業も、知恵とアイデアを出し合い、新しい商品やサービスを次々と開発している。これが「身の丈イノベーション」だ。ちょっとした工夫、ユニークな発想で成果を上げている身の丈イノベーションを実現するための重要なポイントを、事例で解説する。

withコロナの世界で重要性がますます高まるオンラインチャネル。ここで体験価値を高めることができれば、「実際に買ってみよう」「使ってみよう」「行ってみよう」と、リアルの需要につなげることができる。では、オンラインチャネルにおける体験価値を高めるにはどうすればいいのか。先進事例を取材し、ヒントを探る。

2013年創業のスタートアップ、ヤプリが20年12月、東証マザーズに上場した。創業以来、売上高や導入数を伸ばしてきた企業の成長にデザインはどう貢献してきたか。代表取締役の庵原保文氏と、共同創業者でデザイナーの黒田真澄氏に聞いた。
デザイン経営の基礎を学ぶ

イノベーションの実現につながるとして期待されるデザイン思考だが、さまざまな解釈があり、理解にしにくいのも事実。本連載では、日本でデザイン思考を長年、見つめてきた著者が、デザイン思考の基礎から解説していく。なぜデザイン思考が求められているかが分かるはずだ。

デザイン思考のリーディングカンパニーIDEOと共に、日本企業が直面しがちなハードルと、その克服法について、事例を踏まえながら考察する。デザイン思考は今やイノベーションに向けた定番のアプローチとなったが、十分な成果を上げている事例はまだ少ない。社内で賛同を得られずプロジェクトが頓挫する、結果を焦るあまり中途半端に終わってしまう、「完全志向」から抜け出せずプロトタイピングで失敗する……。落とし穴に陥らないためにはどうすべきか。

イノベーションとは、社会課題の本質に気づき、その課題解決に果敢に挑戦する過程で生まれるもの。この実現に有効なのが、デザインマネジメントという考え方だ。プロダクトは作って終わりではなく、そこに介在するものすべての関係性をひも解きながらデザインしていくという考え方で、全体を俯瞰(ふかん)する視点と要素分解したディテールを見る視点の2つが必要になる。これらの視点が持つ重要性とイノベーション実現の関係を解説する。