人口の集中が続く都市における慢性的な渋滞や、それにまつわる環境問題、高齢者の免許返納後の「足」の確保、地方の公共交通の衰退など、多くの社会課題を背景に様々な次世代交通サービスが検討されています。

(写真/Shutterstock)
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 人口の集中が続く都市における慢性的な渋滞や、それにまつわる環境問題、高齢者の免許返納後の「足」の確保、地方の公共交通の衰退など、多くの社会課題を背景に様々な次世代交通サービスが検討されています。すぐに思い浮かぶのは、自動運転タクシーや空飛ぶクルマといった先端テクノロジーの代表例ともいえる交通サービスでしょう。これらも実現に向けて前進していますが、もっと身近なところから、移動は大きく変わろうとしています。

 電車やバスに乗るほどではないけど、歩くとちょっと遠い。そんな「ラストワンマイル」の移動手段として世界各国で普及しているのが、電動キックボードのシェアリングサービスです。日本国内では、2021年4月23日からLuup(ループ、東京・渋谷)が、「ヘルメットの着用義務なし」で乗れる日本初のサービスを東京都心部の6区を皮切りにスタートしました。実際に利用してみると、乗車時の不安定さはなく、移動は快適そのもの。都内には電動アシスト自転車のシェアリングサービスも多くありますが、束の間のアクティビティとして移動自体の楽しさを味わえるのは電動キックボードならでは。これまで躊躇していた徒歩15~20分程度の移動が苦にならず、行動範囲が確実に広がります。

 一方、シニア向けには電動車いす開発スタートアップのWHILL(ウィル、東京・品川)が、21年4月8日から月々1万4800円(非課税)、期間無制限のレンタルサービスを始めました。同社の調査によると、20年4月に発令された1度目の緊急事態宣言後、シニア世代の「週5日以上の外出」は1年前と比べて約35%、友人・親戚宅への訪問回数は約76%も減少したといいます。高齢者の外出率の低下は、認知症の進行や加齢により心身が衰えた状態を指す「フレイル」に陥る危険性をはらみます。これを防ごうと、WHILLは従来より割安な定額プランを導入したわけです。

 実際、シニアを対象にWHILLが行った実証実験では、電動車いすの導入により、1週間当たりの平均外出回数が14%増加し、参加者の実に84%が「自分で好きなときに外出できる自信がついた」と回答したといいます。高齢者が向かったのは、地域のイベントや集会所、自分の畑、病院、買い物など多岐にわたっていて、電動車いすがあることで日々の移動を諦めずに済んだことがうかがえます。同社は空港や病院といった施設内で行う電動車いすの自動運転サービスも拡大しており、超高齢化社会を迎えた日本ならではのモビリティとして定着していきそうです。

 最後に、割と身近だけどハイテク、そんな期待の新交通を1つ。18年設立のスタートアップ、Zip Infrastructure(ジップ・インフラストラクチャー、東京・荒川)が挑む、世界初の自走式ロープウエーです。実は世界では、ロープウエーが地下鉄などの代わりに街中の交通機関として整備される例が増えています。従来のモノレールやLRT(次世代型路面電車システム)、地下鉄などを新規で開業するより圧倒的に建設費が安く、空間活用により道路の渋滞解消にも役立つからです。

 国内でこの市場創出を目指すZip Infrastructureは、従来のロープウエーと違って自動運転のゴンドラが自走する形態で、カーブや分岐を伴う路線も自在に組めることが特長。既存の道路上の空間を活用できるため、新たな用地買収が必要なく、既存の都市に実装しやすい利点があります。同社は神戸市が計画する海上ロープウエーの他、沖縄県の大規模開発エリアである中城湾港マリンタウン地区での実用化を目指しています。空飛ぶクルマほどの華々しさはありませんが、次世代交通の“現実解”になり得るかもしれません。

 その他、WILLER(ウィラー、大阪市)や三井不動産の「サブスクMaaS」、中国で進む自動運転サービスの現在地など、次世代モビリティの最新トレンドをまとめました。ぜひご一読ください。

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「サブスクMaaS」も登場

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月5000円乗り放題のサブスクMaaS 「マイカーいらず」の現実解

 高速バス大手のWILLER(ウィラー、大阪市)は、2021年5月以降に月定額5000円乗り放題のオンデマンド乗り合い交通「mobi(モビ)」のサービスを始める。東京・渋谷区、豊島区、京都府京丹後市を対象に順次展開を始め、25年までに60都市、90エリアに広げる計画。「コミュニティモビリティ」と銘打つmobiの新しさとは?


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三井不が「サブスクMaaS」拡大 店舗のモビリティ化も推進へ

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衣食住を包む「複合型サブスク」 先手打つANA、東急も実験

 移動手段だけでなく住居や外食、レジャーなども包括する新種の複合型サブスクサービスがここに来て登場している。全日本空輸(ANA)や東急が展開しているものそれ。延長線上にあるのは、全てがサブスク化し衣食住をなんでもまかなえる未来の生活だ。複合型を目指す各社の狙いはどこにあるのか。最前線の様子を追った。


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自動運転レベル3搭載のホンダ「レジェンド」 2カ月で6割販売

 ホンダが自動運転レベル3に該当する運転支援機能を含む「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を搭載した「レジェンド」を発売してから2カ月がたつ。1100万円(税込み)の高級車だが、発売2カ月で既に予定の6割を販売した。


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バイドゥ 成都で世界一流のスマートドライブモデル地区実現へ

 中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)は2021年3月10日、四川省成都にある成都高新区(成都高新技術産業開発区)にて、同区域を運営する成都高新区電子信息産業発展公司と共同で、次世代通信規格「5G」を活用したスマートシティーおよびスマートドライブを推進するプロジェクトを総額1億500万元(約17億7000万円)で落札した。四川省で初のスマートドライブのモデルプロジェクトとなる。


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バイドゥ 世界初の自動運転MaaSプラットフォームを広州に展開

 中国インターネット検索最大手百度(バイドゥ)は2021年2月9日、自社の自動運転プラットフォーム「Apollo(アポロ)」と広州黄埔区が連携して構築した、世界初の多元的なサポートを実現した自動運転MaaS(Mobility as a Service)プラットフォームを公開した。同日、広州黄埔区で行われた、花見を楽しむ「2021年迎春イベント」で実用化し、無人運転車を含む5種類の自動運転車を使って市民に利便性を提供し、広場周辺の交通を効率化した。


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 コロナ禍において、世界では自動運転や電動化に代表される新しい移動サービスや、スマートフォン1つに複数の移動手段を統合する「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の動きが加速している。そんな中、注目されるのが、環境に優しい様々な移動サービスを集約させて利便性の向上を図る「モビリティハブ」だ。新刊『MaaSが都市を変える~移動×都市DXの最前線』を出版したモビリティデザイナーの牧村和彦氏が報告する。


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 最先端のデジタル技術を活用したスマートシティの議論が日本各地でも本格化している。先行する米国などで進むのが、「路肩」の柔軟運用による移動しやすい新しい都市の構築だ。新刊『MaaSが都市を変える~移動×都市DXの最前線』を上梓したモビリティデザイナーの牧村和彦氏が報告する。