長く続くコロナ禍でお酒を飲むスタイルは「仕事帰りの一杯」から「家飲み」が中心になりつつあります。しかし、変化したのは飲み方だけではありません。お酒を取り巻くトレンドも以前とは大きく様変わりしています。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。
長く続くコロナ禍でお酒を飲むスタイルは「仕事帰りの一杯」から「家飲み」が中心になりつつあります。しかし、変化したのは飲み方だけではありません。お酒を取り巻くトレンドも以前とは大きく様変わりしています。
家飲み需要の大ヒットは何と言っても「スーパードライ 生ジョッキ缶」(アサヒビール)でしょう。大きく開いた缶の口にきめ細かな泡が自然に発生。まるで生ジョッキで飲むような味わいを自宅でも楽しめるとあって発売前からSNSやニュースなどで大きな話題になりました。4月6日にコンビニ先行で発売されましたが、販売数量が想定を大きく上回り何と2日で出荷停止に。開発に4年をかけたという新商品の人気はしばらく続きそうです。
一方、ビール人気に押される日本酒では「超高級化」がトレンドの一つになっています。ベンチャー企業のClearが仕掛ける「SAKE HUNDRED」の主力商品「百光(びゃっこう)」は、何と税込み2万7500円(720ミリリットル)。しかし、海外の日本酒品評会で金賞を受賞し、20年8月の販売時にはわずか3日で完売しました。21年1月に再販売されましたが抽選に応募が殺到しているようです。
日本酒の味にも変化が起きています。酸味を出すため、日本酒造りに使われる定番の黄麹ではなく、焼酎に使われる白麹を採用する銘柄が増加。新政酒造の「亜麻猫」が有名ですが、富久長の「白麹純米酒 海風土(しーふーど)」(今田酒造本店。税込み1650円・720ミリリットル)など各地で同タイプの酒が生まれています。
日本酒の名門ブランドも黙ってはいません。数十年ぶりとなる大胆なブランド改革や刷新に取り組む酒蔵が相次いでいます。背景にあるのは、人気を支えてきた従来のファンの高齢化。さらにライフスタイルが多様化したことで、求められる日本酒のスタイルが変わってきたことも挙げられます。そうした状況を踏まえ、日本酒になじみがなかった若年層に選んでもらえるような商品を開発しようとしているのです。
ニューノーマル時代の飲酒スタイルは家飲みがメインになりましたが、お酒の選択肢は拡大しています。次のゴールデンウィークはご自宅でゆっくりグラスを傾けながら、こうしたお酒の最先端トレンドを参考にしていただけますと幸いです。

アサヒ「生ジョッキ缶」 既成概念捨てて生まれた“泡の新体験”

大手ビール4社開発者の異例座談会 ライバルの味をどう見てる?

激変する日本酒業界

日本酒では、超高級化もトレンドの一つ。ベンチャー企業が仕掛けるブランド「SAKE HUNDRED」の主力商品は、1本3万円に迫る高価格帯ながら販売3日で完売する人気だ。新たなジャンルでは、シャンパンのような「発泡清酒」に注目。海外プレーヤーの参入や、海外で立ち上げた酒蔵からの“逆輸入”といった動きも、日本酒の多様性を広げている。

日本酒の世界では、新興のブランドや酒蔵の活躍が目覚ましい。少量生産かつ流通を絞りながらも「これなら飲みたい!」とファンを急拡大させたのは、「No.6」で一世を風靡した新政酒造。革新的な酒造りは、業界に多様なトレンドを生み出した。今注目の一つが、「仙禽」を代表とする甘酸っぱい日本酒。昔ながらの製法で醸す「シン・ツチダ」なども話題だ。

「獺祭」「久保田」「八海山」といった銘酒を手掛ける“名門”酒蔵が、相次ぎ数十年ぶりとなる大胆なブランド改革や刷新に取り組んでいる。ライフスタイルの多様化に伴って求められる日本酒が変わり、現代の暮らしに合った銘柄へと変貌を遂げようとしている。
快進撃!レモンサワーの開発事情

「檸檬堂」生みの親が明かす 第5の味・カミソリレモン投入の真意
2020年のレモンサワー人気をけん引した日本コカ・コーラの「檸檬堂」に、第5の味となる「カミソリレモン」が加わった。新味開発のハードルは高く、飲んだときの切れ味を追求してアルコール度数を上げれば、果実感が損なわれるという問題があった。開発をリードしてきた“生みの親”であるパトリック・サブストローム氏に、完成までの道のりを尋ねた。

1984年に日本初となる缶入りチューハイ「タカラcanチューハイ」を発売したのが宝酒造。RTD(レディー・トゥー・ドリンク=開けてすぐ飲める酒)という新市場を創造した。そして、2010年代中ごろからはいち早くレモンサワーブームに着目し、「寶『極上レモンサワー』」 「レモンサワースクワッド」などをヒットさせた同社に、その商品開発の原点を聞いた。

ここ最近ヒットを飛ばし続けているの缶チューハイの分野だが、その歴史はまだ浅い。1984年に宝酒造が日本で初めて缶入りのチューハイ「タカラcanチューハイ」を発売。キリンやサントリー、サッポロ、アサヒなどの大手飲料メーカーがその後次々と参入し、一大市場が築かれた。変遷をたどると、現在に続くトレンドが見えてくる。
盛り上がるワインのブレイク予測

ここ数年の日本ワインで最も注目すべき地域の一つが、長野県の「千曲川ワインバレー」と呼ばれるエリアだ。ワイン用ブドウが獲れる地域と思われていなかったが、1人のブドウ栽培成功をきっかけに「千曲川ワインアカデミー」が設立。その卒業生が協力し合って、次々と新たなブドウ畑やワイナリーが生まれるという好循環が生まれている。

国内のワイン関連メーカーが、この2、3年でワインの新たな楽しみ方を次々に提案している。国内最大手のメルシャンは、長野県上田市に「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー」をオープン。広大なブドウ畑を生かした世界標準の「ワインツーリズム」を目指す。キッコーマンは、原酒の混合で新たなワインを造れるユニークなサービスを展開中だ。

人気漫画『神の雫』原作者2人に聞く ワイン語彙力の鍛え方(1)
世界で累計1100万部以上を発行する大人気ワイン漫画『神の雫』。登場人物がワインを語る斬新かつ詩的な表現の数々が話題を呼び、世界のワインブームに一役買ってきた。原作者「亜樹直」は、樹林ゆう子と樹林伸の姉弟の共同ペンネーム。コルクを抜いては言葉を重ね、人と人とをつないできた2人に、ワイン語彙力の鍛え方を聞いた。