デザイン思考が注目され、イノベーション創出を目指して多くの企業で活用されるようになると、さまざまな課題が見えてきました。期待したほど成果を上げられない、なかなか社内に定着しないといった例も少なくないようです。なぜ難しいのでしょうか。日経クロストレンドの記者が解説します。

(写真/Shutterstock)
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 デザイン思考が注目され、イノベーション創出を目指して多くの企業で活用されるようになると、さまざまな課題が見えてきました。期待したほど成果を上げられない、なかなか社内に定着しないといった例も少なくないようです。なぜ難しいのでしょうか。

 デザイン思考の活用を成功させ、社内に定着させるには一過性で取り組むのではなく、意思決定の仕組みや企業組織の在り方といった、企業がこれまで抱えていた問題点までも見直す必要があるからです。デザイン思考の方法論だけを学んでも、うまく進みません。

 最近はデザイン思考を社内で率先して推進する「デザインシンカー」を育成する企業が出てきました。またデザイン思考を超える「アート思考」も期待されています。デザイン思考の本質を理解すれば企業の「デザイン経営」の推進にもつながり、新たな成長力が生まれるはずです。

デザイン思考ベーシック


デザイン思考 成功と失敗の分かれ目


デザインシンカーを育成せよ


デザイン思考がさまざまな場面に広がる

在宅勤務対応マンション デザイン思考で開発、リコーが協力

 大和ハウスグループのコスモスイニシア(東京・港)が、在宅勤務用の新しいスペースを備えたマンションを開発した。2つのタイプがあり、「コモリワーク」「ドマワーク」と呼んでいる。開発に当たっては、デザイン思考の手法を使ったリコーの「価値創出プログラム」を活用した。2020年4月に発売したところ、すぐに売れたという。


トヨタやパナも参加、デザイン思考フェスで優秀な大学生を発掘へ

 VISITS Technologies(東京・千代田)は大学生と企業を結ぶため、2020年10月21日に「デザイン思考フェス2020」を開催した。大学生のデザイン思考力を育成するためのイベントで、トヨタ自動車やパナソニック、住友商事など大学生のデザイン思考力育成を支援する大手企業34社も協賛し、未来のイノベーターを支援した。次回は10月29日に開催する。


調査で判明! デザイン経営は売り上げを伸ばす

 日本デザイン振興会は、デザイン経営がどのように企業経営に寄与しているかを示すために、大規模なアンケート調査を実施、2020年11月に結果を発表した。調査結果のうち最も注目すべきは、デザイン経営への取り組みと企業業績との関係だ。デザイン経営へ積極的な企業ほど成長力が高い傾向が見られたのだ。


アート思考が創造性を刺激する

発想力を鍛える「アート思考」 デザイン思考との違いとは

 ゼロから1を生みだすイノベーションに欠かせない発想力や創造力。それらを育む「アート思考」への関心が、じわじわと高まっている。アート思考を鍛えるワークショップを展開するボダイの町田裕治氏に、アート思考の本質とは何か、なぜそれが重要なのかを聞いた。


アクセンチュアが「芸術部」 アートが顧客企業との「懸け橋」に

 デザインシンカー育成に向け、アートに期待するのがアクセンチュアだ。“部活動”としての「芸術部」に加えてイノベーション拠点を絵画で飾るなど、アートに接する機会を増やした。これが一つのきっかけとなり、「デジタルトランスフォーメーション(DX)時代で何をすべきかを自由な発想で一緒に考えてほしい」と相談されるなどの効果を生んだ。


凸版印刷と京大 アート思考で人材開発を推進、サービス外販も

 凸版印刷と京都大学は、アーティストの思考法を新規事業創出に結び付ける独自の「アートイノベーションフレームワーク」を発表した。凸版印刷の人材開発プログラムとして同フレームワークを既に活用しており、今後は人材開発サービスの一つとして外販していく。


中小企業も注目するデザイン経営

デザイン経営 成功への道

 デザイン経営の成功には、デザイナーとクライアントの関係強化が重要だ。しかし両者の間にはざまざまな“溝”が存在し、トラブルが発生しやすい。デザイナーやクライアントの声を聞き、先進事例を取材することで、溝を埋めるためのポイントを探った。


デザイン思考の次

 デザイン思考が日本企業でブーム的な動きを見せてから、数年が経過した。いまだにさまざまな議論を呼んでいる。イノベーションへの期待が高まるにつれ、デザイン思考を導入する企業が相次いだものの、なかなか社内に定着しないという例も少なくない。なぜ難しいのか。デザイン思考を定着させるために工夫する企業の取り組みを追った。


身の丈イノベーションのススメ

 イノベーションには「開発には多額の投資が必要」といったイメージを抱きがちだが、潤沢な経営資源・体力を持たない中堅中小企業も、知恵とアイデアを出し合い、新しい商品やサービスを次々と開発している。これが「身の丈イノベーション」だ。ちょっとした工夫、ユニークな発想で成果を上げている身の丈イノベーションを実現するための重要なポイントを、事例で解説する。

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