大豆やエンドウ豆などを使って、本物の肉のような味わいや食感を再現した「植物肉」など、肉のフードテック市場が日本でも拡大しつつある。日経クロストレンドでは、「植物肉」「培養肉」「昆虫食」など、国内でどの企業が参入しているのかが分かる「動かせる『肉のフードテック』プレーヤーマップ」を作成した。拡大する市場をとるのはどの企業なのか、その行方を占う。
「植物肉」の市場が、日本でも拡大しつつある。大豆たんぱく素材の国内市場で約5割を握る不二製油グループ本社を筆頭に、食肉最大手の日本ハム、小売り最大手のイオン、外食でもドトールコーヒーやバーガーキングなどが、相次いで参戦。今回、日経クロストレンドが日経MJと共同でまとめた「代替たんぱく国内プレーヤーマップ」では、動物の細胞を培養した「培養肉」、「昆虫・藻類」を手がける企業と併せて主要な27社を挙げた。そのうち、実に20社が植物肉のプレーヤーだ。
日経クロストレンドが日経MJと共同でまとめた「代替たんぱく国内プレーヤーマップ」では、「植物肉」「培養肉」「昆虫・藻類」の主要27社をマッピングした。
●ジャンルごとのプレーヤーの確認「植物肉」「培養肉」「昆虫・藻類」のジャンルごとのプレーヤーが確認できる。
●企業ごとに活動の詳細が分かる
企業ロゴにマウスオーバーすることで、各企業の参入状況の詳細が表示される。
【代替たんぱくプレーヤーマップ】
植物性代替肉




















培養肉


昆虫・藻類





なぜ各社が植物肉に注力するのか。背景にあるのは、世界的な人口増加による将来的なたんぱく質不足、畜産の拡大による環境負荷の懸念、食に対する健康意識の高まりだ。欧米では米ビヨンド・ミートやインポッシブル・フーズのような強力なスタートアップがけん引する形で普及期を迎えており、矢野経済研究所によると、2030年の世界市場規模(植物肉・培養肉計)はメーカー出荷金額ベースで約1兆8723億円にまで拡大すると予測されている。
ただ、いまだ日本では「海外ほど植物肉は根付かない」という消極的な意見も少なくない。日本の消費者はもともと大豆製品を中心とした植物性たんぱくに慣れ親しんでおり、「ヘルシーさ」だけでは新鮮味に乏しいのが一因。また、海外の消費者に比べて食に対する環境意識も低いともいわれる。しかし、現実は大方の想像よりもっと先に行っていた。
例えばイケア・ジャパンは、20年10月から主力の「ミートボール」の食感や味わいをエンドウ豆たんぱく質やジャガイモ、タマネギなどで再現した「プラントボール」を本格展開。他の植物性メニューも充実させたところ、すでに東京・原宿や渋谷の都市型店舗では、販売するフード類の約50%がプラントベースで、売り上げでも同じく半数を占めるという驚異的な実績をたたき出している。
その秘密は、「ミートボールラバー」をも納得させる味わいと、低価格の両立にある。イケアはプラントベース食品の普及=環境負荷の削減につながるとして、最短で普及させるための戦略を取っている。
これは20年12月から「プラントベースワッパー」の販売を始めたバーガーキングもしかり。カロリーは通常のワッパーとあまり変わらないが、見た目や味わいは本物の肉そっくりでうまい。あえて「ジャンクな代替肉バーガー」を打ち出して成功している。必ずしも肉よりヘルシーではないが、本当においしくなければ消費者は見向きもしないから、環境負荷は減らせない。そんな割り切りの戦略といえる。
もちろん、国内メーカーも本腰を入れている。味の素が、20年11月に大豆由来の原料を開発するDAIZ(ダイズ、熊本市)へ出資するなど、大手企業とスタートアップの連携も生まれてきた。丑(うし)年の2021年、「肉のフードテック」の市場が、さらなる飛躍の年となるか、目が離せない。
代替たんぱくを筆頭に世界の食卓を激変させているフードテックについては、日経クロストレンド発のベストセラー書籍『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』でも詳しく解説している。ぜひ今回の厳選記事と併せてお読みいただきたい。
『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』
田中 宏隆、岡田 亜希子、瀬川 明秀 著/外村 仁 監修 日経BP 1980円
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肉のフードテック最新プレーヤーマップ公開 新市場を獲るのは?


イケア、バーガーキングの植物肉戦略とは?

欧米ほど肉食が根付いていない日本では、植物肉ははやらない――。本当にそうだろうか。そんな間違った“常識”を世界基準で吹き飛ばそうとしているのが、イケアだ。植物由来の原料のみを使ったプラントベース食品を日本で続々と投入。普及を加速させている。同社の代替肉戦略に迫った。

ハンバーガーチェーンを筆頭に外食プレーヤーも植物肉の提供に乗り出している。“1人焼き肉”で知られる焼肉ライクは、焼き肉チェーンで初めて参戦。海外で実績のあるバーガーキングも、日本独自の植物性パティを使う「プラントベースワッパー」を商品化した。いわく「ジャンクな代替肉バーガー」。逆張り戦略の狙いとは?

フードテックベンチャーによる、数十億円、数百億円規模の資金調達が続く米国。日本でも、特化型のVC(ベンチャーキャピタル)が生まれるなど、活性化している。代替たんぱくをはじめとしたフードテック市場は今後どうなるか、黎明(れいめい)期から業界を追う独立系VCのグローバル・ブレインの木塚健太氏に聞いた。
培養和牛バーガー、コオロギせんべいも

世界初「培養和牛バーガー」も誕生? 米ジャスト「グッドミート」の衝撃
2020年12月、衝撃的なニュースが世界を駆け巡った。米イート・ジャストが、シンガポール政府から世界で初めて培養肉の販売認可を受け、一般消費者向けにレストランで培養チキンナゲットの提供を始めたのだ。同社は日本の鳥山畜産食品と「培養和牛」も開発中。その最前線を追った。

無印良品「コオロギせんべい」 ヒットの陰に徳島発ベンチャーあり
将来予想される食糧難の時代に向け、急ピッチで開発が進む代替肉などの代替たんぱく源として、昆虫食が注目されている。既に、海外では昆虫を使った食品が続々と誕生。日本でも、無印良品を展開する良品計画がベンチャー企業と組んで「コオロギせんべい」を発売するなど、動きが活発化している。本格普及は目前だ。

低コストで培養肉の大量生産狙う 日本ハムがスタートアップと協業
世界的な人口増加で食肉需要が高まり、将来的にたんぱく質不足が懸念されるなか、「植物肉」や「培養肉」などの代替肉への期待が高まっている。家庭用の植物肉を2020年に発売した食肉国内最大手の日本ハムでは、培養肉も早期実用化を目指して研究を進める。パートナーは、15年創業のインテグリカルチャー(東京・文京)だ。
丸わかり!代替たんぱく世界最新トレンド

次の注目は「代替マグロ」「微生物発酵」… 海外最新トレンド5選
米サンフランシスコを拠点とするスクラムベンチャーズが2020年に始めた、日本の食品大手と世界のスタートアップをつなげ、新事業の創出を目指すプログラム「Food Tech Studio-Bites!」。日本企業との協業を目指す代替たんぱくの海外プレーヤーから、最新トレンドを探る。

「食&料理×サイエンス・テクノロジー」をテーマにしたイベント「Smart Kitchen Summit JAPAN(SKSJ) 2020」(主催シグマクシス)が2020年12月17日から19日まで3日間にわたって開催された。今回は、世界で注目が集まっている代替プロテイン(タンパク)市場について、SKSJで語られた最新トレンドをリポートする。

変わる世界の消費者、フランス編 進化する食文化を現地リポート
新型コロナウイルス感染症の拡大によるロックダウンは解除されたものの、夜間の外出禁止令が出たままのフランス・パリ。年末のホリデーシーズンには、ホームパーティーを楽しむ姿も見られた。そんな中、植物由来の代替”高級食品”がビーガンを中心に話題を集めている。コロナ下で起きたパリの消費の変化とは。