米グーグルが2年以内にWebブラウザー「Chrome」でWebサイト閲覧者の行動をトラッキングできるサード・パーティー・クッキーの利用を規制することを明らかにしたのは2020年1月のこと。それから1年がたち、脱クッキーに向けた活動が活発化しています。同社は21年3月から代替技術の実証実験を行うことを発表しました。日経クロストレンドの記者が解説します。
米グーグルが2年以内にWebブラウザー「Chrome」でWebサイト閲覧者の行動をトラッキングできるサード・パーティー・クッキーの利用を規制することを明らかにしたのは2020年1月のこと。それから1年がたち、脱クッキーに向けた活動が活発化しています。同社は21年3月から代替技術の実証実験を行うことを発表しました。
クッキーはWebサーバーからブラウザーに送られる小さなテキストデータです。初めてWebサイトにアクセスしたブラウザーにはサーバーから「セッションID」が割り振られ、Webサイトのサーバーに保存されます。このセッションIDが書き込まれたクッキーを識別子として、2度目以降のサイトへの訪問時に同一ブラウザーであることを判別。こうしたWebサイトの事業主体者が発行するクッキーはファースト・パーティー・クッキーと呼ばれます。
一方、問題視されているのはサード・パーティー・クッキーと呼ばれる、アクセスしたWebサイトの事業主体者とは別の第三者が発行するクッキー。主に広告配信に使われ、広告会社が取引先のサイトに設置した広告枠や計測タグを通じて訪問者に付与します。このクッキーを通じて、取引先のサイト閲覧データを横断的に取得し、広告配信に活用しているのです。しかし、サイト訪問者にとっては自らの閲覧履歴データが同意なく広告ビジネスに使われていたことになります。
サード・パーティー・クッキーについては米アップルが既に20年3月にWebブラウザー「Safari」での受け入れを完全にシャットアウトし、Webブラウザー「Firefox」を展開する米モジラも19年に受け入れない初期設定にしています。グーグルが規制に慎重だったのは、デジタル広告が主な収益源だから。「プライバシーか広告かという極端な選択ではなく、プライバシーを優先しながら広告でもパーソナライズしたコンテンツを提供する。両立できる方法を検討していく必要があると考えた」と米グーグル トラスト&プライバシーグループ プロダクトマネージャーのチェトナ・ビンドラ氏はコメントしています。
この影響を大きく受けるのがリターゲティング広告。そこで、広告会社は3つの方向性で対策を進めています。 「グーグルが開発を進める代替技術の利活用」「広告に活用する識別子の独自開発」「クッキーに依存しない新たな広告商品の開発」の3つ。ただいずれの方向性にも課題があり、試行錯誤が続きそうです。

Googleが脱クッキー本格化 猶予は1年、広告業界に起こる大変動

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プライバシー対策、広告業界の対応は

アップル「IDFA」変更で広告業界騒然、フェイスブック猛烈抗議
米グーグルによるサード・パーティー・クッキーの廃止とほぼ並行し、大きな論争を巻き起こしているのが、米アップルの端末を識別するIDである「IDFA」のポリシー変更である。これに猛然と抗議するのが、米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)であるが、2021年の早期に変更が実施される見通しとなった。一体何が起きていて、どう備えるべきか。

ディノスが脱クッキーでデータ戦略推進 カタログとアプリを融合
脱クッキーに向けて大手プラットフォーマーが活動を本格化させる中、広告主が取るべき対策はあるのだろうか。1つ確実に言えるのは、既存顧客との関係性の強化につながるデータがより重要になるということだろう。カタログ通販大手のディノス・セシール(東京・中野)は脱クッキー時代を見据え、スマートフォン向けアプリを使って、紙のカタログの閲覧傾向をデータ化しようという試みを始めた。

米グーグルがWebブラウザー「Chrome」において、サードパーティークッキーに代わる技術を提案した。AI(人工知能)によって利用者の属性を分析し、大きなユーザーグループに分類する。その情報を広告主側のサイトから参照して反応を分析。利用者に合った広告を表示することで、少なくとも95%のコンバージョン率を実現できるとしている。
データ活用でプライバシー対策が急務に

あなたの会社にありますか? DXに必須「プライバシー保護組織」
パーソナルデータとデジタル技術を高度に活用してビジネスをダイナミックに再構築しようとするDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組む先進的な企業では、「プライバシーガバナンス」が不可欠な要素として認識され、その構築が進められつつある。本連載の第1回では、なぜ今、プライバシーガバナンスが求められているのかについて考えていく。

連載第1回では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるにはプライバシーガバナンスが不可欠であり、「プライバシー保護組織」の新設が重要であることを示した。今回は、「プライバシー保護組織」の具体的な実現手法を考えていく。

プライバシー影響評価(PIA)の実践が企業のガバナンスを促進
連載第2回では、プライバシーガバナンス推進の核となる「プライバシー保護組織」について、組織論の観点から具体的な実現手法について示した。今回は、そのプライバシー保護組織が担う重要な役割であるプライバシー影響評価(PIA:Privacy Impact Assessment)について考えていく。
テレビ広告業界はデジタル化で激変

広告主がSASを活用すべき7つの理由 テレビCMのDX推進の要に
連載第1回は、テレビCMの長年の課題であった「欲しいCM枠だけを買えない」を解決する画期的なバイイング手法として登場したSAS(スマート・アド・セールス)を紹介した。第2回は広告主がこのSASを活用すべき7つの理由を解説する。デジタル広告と同じ指標でテレビCM枠が買い付けられるようになるため、テレビとデジタルの統合を推進する一翼を担う存在となりそうだ。

【特報】テレビCMも成果報酬型に ラクスルがADKと提携し実現
ラクスルとADKマーケティング・ソリューションズ(東京・港)は2020年12月1日、成果に応じて両社が受け取る報酬が増減するテレビCM活用支援サービス「運用型成果連動CM」の提供を始める。成果が出なければ両社が費用を負担する意欲的な取り組みだ。顧客企業と定めたCPA(顧客獲得単価)を基準に、テレビCMとデジタル広告を組み合わせた広告運用を請け負う。

さまざまなデータで多角的に効果測定ができるデジタルマーケティングの普及とともに、十分なデータが取得できないテレビCMに対して不満を持つ広告主が増えています。さらに新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化によって、広告宣伝を控える広告主が続出。日経クロストレンドの記者が解説します。