さまざまなデータで多角的に効果測定ができるデジタルマーケティングの普及とともに、十分なデータが取得できないテレビCMに対して不満を持つ広告主が増えています。さらに新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化によって、広告宣伝を控える広告主が続出。日経クロストレンドの記者が解説します。

(写真/Shutterstock)
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 さまざまなデータで多角的に効果測定ができるデジタルマーケティングの普及とともに、十分なデータが取得できないテレビCMに対して不満を持つ広告主が増えています。さらに新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化によって、広告宣伝を控える広告主が続出。

 そんななか、2020年4月から「新視聴率」の提供がスタートし、全国で個人視聴率およびタイムシフト視聴の分析が可能に。テレビCMがデジタル広告に近づいています。これを商機と捉え、異業種からテレビCM支援事業に名乗りを上げたのが、オンライン印刷サービスで知られるラクスル。20年4月にテレビCM効果最適化サービス「ノバセル」の提供を始めました。

 ノバセルはテレビCMの効果分析だけでなく、CM出稿のための調査とプランニング、制作会社と連携したテレビCMクリエイティブ制作、放送枠の買い付けまで請け負います。サービスの肝となるのがテレビCM効果分析ツール「ノバセルアナリティクス」。ラクスルが持つ秒単位のテレビCMの放送データと、Web解析ツール「Google Analytics」のデータを連携し、テレビCMによってKPI(重要業績評価指標)がどのように変化したかを解析できます。

 このように、テレビCMがデジタルマーケティング感覚で使える広告に変わりつつあります。それによってテレビCMはどう変わっていくのでしょうか。

ラクスルが狙う「テレビCM革命」 EC感覚でCM枠を購入可能に


CM121種を天気で出し分けるウェザーニューズ 仕組み外販も


【特報】北陸朝日放送が流通3社と連携 番組とCMで店舗誘導


テレビCMの変化に広告主はどう動く?

広告主がテレビに抱く不満と期待 個人視聴率化で番組改革求む

 ビデオリサーチ(東京・千代田)は2020年3月、24年ぶりに視聴率を大幅刷新し、全国で個人視聴率の提供を始めた。広告主はどう受け止め、どのようにマーケティングに活用できると考えているのか。日本アドバタイザーズ協会常務理事で電波委員長を務める、資生堂ジャパンメディア統括部エグゼクティブマネージャーの小出誠氏に聞いた。


売上3.2倍のコアラマットレス CM効果分析でつかんだ早朝ニーズ

 オーストラリア発のマットレスD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド「コアラマットレス」が好調だ。2020年7月に同社初のテレビCMを関東エリアで放送し、サイトのアクセス数は前年同月比2.9倍、売り上げは同3.2倍と大幅増となった。自社でそろえたデータを使い、プランニングや効果検証に生かしている。


テレビCMがオウンドメディアに 「トヨタイムズ」制作の舞台裏

 トヨタ自動車がテレビCMを活用した新たなブランド広告に取り組んでいる。同社が展開する「トヨタイムズ」は、テレビCMとネットメディアを融合させたオウンドメディアだ。テレビCMで展開するバーチャルな編集部とリアルの編集部が一体となり、トヨタの内部情報を公開している。


テレビCM業界はどう変わる?

CMクリエイター篠原誠氏 効果見える化で“打率”アップに期待

 テレビCMの効果がデータ化されてデジタル広告に近づくと、クリエイティブはどう変わっていくのか。au「三太郎シリーズ」やトヨタイムズ、アタックゼロなど話題のCMを数多く手掛けているクリエイティブディレクターの篠原誠氏に聞いた。


電通がTV個人視聴率でマーケ リモートワーカーは半沢直樹好き

 ビデオリサーチ(東京・千代田)が24年ぶりに視聴率を大幅刷新した。これまで大都市でしか取得していなかったデータを全国に拡大し、個人視聴率の提供を開始した。個人=ユニークブラウザーを対象にデータを集めるデジタルマーケティングにならった格好だ。電通も個人基点のテレビ活用サービスを展開し始めた。


ネット広告代理店がテレビCM支援に続々参入 AI進化で役割が激変

 ネット広告代理店が相次いでテレビCMの支援サービスを打ち出している。AI(人工知能)の進化による運用型広告の運用の機械化、広告主のニーズの変化、それにともなうネット広告代理店の役割の変化などが理由として挙げられる。ネット広告代理店の参入により、テレビCMの運用市場が生まれ、アプリやEC事業者といった新しい広告主の出稿が増えそうだ。


テレビデータの見える化でエリアマーケが有効に

データマーケティングを正しく理解 DMPは個人特定マーケではない

 この連載では、テレビを中心にデータドリブンなマーケティングのスキルアップにつながる考え方や手法などについて紹介していく。第1回は用語の整理から始めたい。近年、「データ(ドリブン)マーケティング」という用語が氾濫して、誤用や混同が増えている。それを正しく理解することが必要だ。


テレビCMの効果を劇的改善 エリアマーケティングのススメ

 個人のデータを取得して活用するマーケティング手法は多くの企業に広まったが、多くの消費財メーカーにとって必ずしも最適ではない(関連記事「データマーケティングを正しく理解 DMPは個人特定マーケではない」)。「個人」はマーケティングの単位として細かすぎて、効率が悪いからだ。そのため「エリア単位」が有効だ。第2回はその理由とエリアマーケティングで効果を上げるための方法を紹介する。


テレビCMの適正な予算配分を3ステップで決定 エリアMMM活用法

 連載第2回は消費財メーカーにとって、最もマーケティングをデータに基づいて行う最も合理的な単位が「エリア」だということを「エリアMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)」とともに詳しく解説した(関連記事「テレビCMの効果を劇的改善 エリアマーケティングのススメ」)。そのエリアMMMの具体的な活用法について、3つのステップに分解して紹介しよう。

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