フードテックは、2025年までに世界700兆円市場に達する――。 日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。
フードテックは、2025年までに世界700兆円市場に達する――。
この衝撃的な市場予測を発表したのは、米国のフードテックイベント「スマートキッチン・サミット(SKS)」創設者のMichael Wolf(マイケル・ウルフ)氏。世界ではフードテック領域のベンチャーキャピタル投資がかつてない盛り上がりを見せており、米調査会社PitchBook(ピッチブック)によると、19年の総投資額は150億ドル(約1兆6050億円)に達し、14年のおよそ5倍に迫る勢いがあります。
本物の肉のような「植物性代替肉」「培養肉」から、食領域のGAFAとも言われIoT家電の“頭脳”となる「キッチンOS」、店舗を持たないテークアウト専用レストラン「ゴーストキッチン」、Amazon Goに代表される「次世代コンビニ」まで、食にまつわる業界が最先端のテクノロジーとビジネスアイデアによって今、大きな変革期を迎えています。
この食分野のイノベーションの流れは、withコロナ&アフターコロナ時代にあっても「不可逆」な変化だといえるでしょう。すでに米国を中心に大手ファストフードチェーンが採用し、一般のスーパーマーケットでも市販されている植物性代替肉は、従来からの環境保護や健康志向の高まりとともに、過度な「動物依存」のリスクを避けようと、19年比200%以上の大幅な伸びを示しています。日本でも、直近で大豆ミートを使用したハンバーガーやから揚げの販売をローソンが始めたり、イケアが「プラントベースカップラーメン」を発売したりと、普及の兆しを見せています。また、外食産業においても、これまでの固定店舗の在り方を見直し、効率的なマッチング技術を用いたテークアウトやデリバリー業態への転換、進化が多く見受けられるようになりました。
このように世界の一大トレンド「フードテック革命」の荒波は、確実に日本に押し寄せています。これから、日本の食品、家電メーカー、小売り、外食産業は最先端のテクノロジーをどのように生かし、進化していけばよいのでしょうか。また、その先にあるはずの、私たちの食卓の進化した姿はどのようなものでしょうか。
日経クロストレンドでは、これまで食分野のイノベーションを「イノベー食(ショク)」と題して、4回にわたって特集してきました。日本のフードテック界の雄といえる完全栄養パスタ&パンを手掛けるベースフードを筆頭に、培養ステーキ肉の開発で世界をリードする日清食品ホールディングス、東京大学、食の嗜好性と気分で最適レシピをレコメンドするサービスを開発しているニチレイなど、多くの先進事例を紹介しています。
この人気特集をベースにして刊行したのが、『フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義』(日経BP)です。グローバルの変化を深く理解しながら、日本の現状とよりよい食の近未来を考える、「次のアクション」につながるビジネスのヒントが満載の一冊です。ぜひこの週末に、今回の厳選記事と併せてお読みいただければと思います。

Withコロナ時代のフードテック5つの視点 「食の再定義」が始まる


「食のGAFA」現る レシピデータで家電制御、買い物体験も激変
日清食品HD、JR東、良品計画も「イノベー食」参戦

日清食品が放つ近未来の「謎肉」 培養ステーキ肉は食卓を変えるか
世界で巻き起こる食分野のイノベーション、「イノベー食」を取り上げる本特集。第3回の今回は、日清食品ホールディングスと東京大学が開発を進める「培養ステーキ肉」を取り上げる。将来的には、近場の培養肉工場から自分好みの“フレッシュミート”が届く世界もあり得る、その技術インパクトに迫る。

JR東日本も「イノベー食」参戦 新大久保に食の“聖地”誕生へ
世界で巻き起こる食分野のイノベーション、「イノベー食」を取り上げる本特集。第4回の今回は、異業種のJR東日本が取り組むフードテックの「場」づくりに焦点を当てる。小ロットの製品開発から販売まで可能にする、食のコワーキングスペースとは?

無印良品「コオロギせんべい」の衝撃 ネットで即日完売なぜ人気?
「無印良品」を展開する良品計画が、次世代タンパク源として注目される食用コオロギを使った菓子を商品化。数量限定発売されたネットストアで即日完売した「コオロギせんべい」の開発ストーリーに迫る。
世界のキーパーソンが語る「フードテック」

ロイヤルHD菊地会長「『ピーク前提』の外食モデルは見直し必須」
新型コロナウイルスショックが直撃した外食産業。大手のロイヤルホールディングスとて、無関係ではいられない。では、この苦境からどう抜け出すのか。テクノロジー活用で変革を推進してきた菊地唯夫会長が語る(聞き手はシグマクシス田中宏隆氏、福世明子氏)。

味の素も本腰「フードテック革命」 社長直轄でベンチャー協業へ
世界で急速に進む食のイノベーションの中で、日本企業はどう立ち向かうべきか。デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みをベースに、フードテック企業との協業を含めた大変革に乗り出した味の素のトップを直撃した(聞き手はスクラムベンチャーズ外村仁氏)。

完全植物肉の米インポッシブル 「ミートラバー」を虜にする秘密
多くのスタートアップ、大企業が参入する植物性代替肉市場で、注目ブランドの1つが米インポッシブルフーズだ。完全植物性の「代替肉」ではなく、あくまで「本物の肉」に近づけることを目指し、新しい「肉の市場」を開拓している同社の製品戦略、市場展開を創業メンバーに聞いた(聞き手はシグマクシス岡田亜希子)。