政府が普及に躍起(やっき)になって旗を振っているのが、キャッシュレス化の推進です。その理由は、現金の取り扱いが減ることによるプラスの経済効果。小売店で働く人は、毎日レジの現金の帳尻を合わせるのがどれほど大変か、身をもって感じているでしょう。日経クロストレンドの記者が解説します。

(写真/Shutterstock)
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 政府が普及に躍起(やっき)になって旗を振っているのが、キャッシュレス化の推進です。その理由は、現金の取り扱いが減ることによるプラスの経済効果。小売店で働く人は、毎日レジの現金の帳尻を合わせるのがどれほど大変か、身をもって感じているでしょう。キャッシュレス化が進めば、こうした手間は不要になり、より生産性の高い他の業務に従業員を振り向けることが可能になります。それに街中に多数あるATM(現金自動預払い機)が減れば、1台当たり年間数百万円といわれるATMの保守管理コストも削減でき、金融機関の経営が改善。利用者の利便性向上につながるかもしれません。

 そのため政府は、キャッシュレス決済を利用した消費者に最大5%を還元する「キャッシュレス・消費者還元事業」を2019年10月から20年6月まで実施。さらには、個人のマイナンバーカードにひも付けた決済サービスを使うと最大25%の還元が得られる「マイナポイント事業」を20年9月から実施することで、何とかキャッシュレス決済を定着させようとしているのです。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、消費者、従業員がともに店頭での接触を避けるようになったことも、こうしたキャッシュレス化の進展に、ある意味、追い風になっています。

 この流れを受け、キャッシュレス化を推進してきたQRコード決済事業者などの多くは、マイナポイント事業を実施する際、独自の上乗せ還元を実施します。消費者にとっては、現金払いではなくキャッシュレス決済を選ぶことで「得する」シーンが、しばらくは続くことになります。この勢いを普及に結びつけなければなりません。

 ところが、2つの課題が露呈してきています。1つは、小売店が決済事業者や複数の決済事業者のサービスを束ねて提供するゲートウェイ事業者に支払う決済手数料の高さ。もう1つは、キャッシュレス決済による売り上げを小売店が現金化できるまでの期間です。

 決済手数料が高く、現金化までの期間が長ければ、消費者がどれほどキャッシュレス決済を便利に思っても、小売店がキャッシュレス決済を導入するはずがありません。コンビニやドラッグストアなどの大規模チェーンが積極的にキャッシュレス決済を導入しているのは、競争が激しく、決済手段をひと通り揃えておかないと消費者が離脱し、機会損失につながると考えているから。ですが、こうした小売店は全国の中では一部に過ぎません。キャッシュレス化を全国津々浦々まで普及させるには、どうしても決済手数料の高さと現金化までの期間の課題をクリアする必要があるのです。

 これらの課題を解決し、キャッシュレス化を推進するには、普及の旗振り役となってきたQRコード決済事業者や小売店だけでなく、銀行やクレジットカード会社、「Suica」に代表される電子マネー運営会社などが、一丸となって普及に取り組む必要があります。政府もようやくこうした課題に気が付き、改善を意識し始めていますが、実際のところはどうでしょうか。キャッシュレス化の「今」が分かる記事を紹介します。

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決済手数料の高さが大きな課題

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 9カ月に及んだ「キャッシュレス・消費者還元事業」がついに終わろうとしている。2020年7月以降の鍵になるキャッシュレスの決済手数料率について、コード決済大手5社にアンケートを実施。小売店側には極めて重要な、キャッシュレスの売り上げを現金化するまでの最短日数や方法も尋ねた。今後の国策なども整理しつつ、アフターコロナのキャッシュレスがどうなるのか、未来を占う。


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公取委が指摘、キャッシュレス決済の普及を阻む銀行の手数料

 近年、QRコードなどを利用した決済事業者の参入が相次ぎ、キャッシュレス決済への関心が高まっている。2020年4月21日、公正取引委員会は、QRコードなどを用いたキャッシュレス決済サービスについての実態調査を行い、報告書を公表した。今回は、キャッシュレス決済において、独占禁止法(競争法)上問題となっている点について、弁護士の二木康晴氏に聞いた。


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 総務省が主導してキャッシュレス化を推進する「マイナポイント事業」が、2020年9月からスタートする。20年4月に実用的な統一コードになった「JPQR」 と併せ、キャッシュレス化を推進する力になり得るのか。そのための課題はどこにあるのかなどを探った。


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