新型コロナウイルスの感染拡大で、厳しい状況に追い込まれている業界の1つがアパレル業界です。日経クロストレンドの記者が解説します。
新型コロナウイルスの感染拡大で、厳しい状況に追い込まれている業界の1つがアパレル業界です。2020年5月、アパレル大手のレナウンが民事再生法を適用。新型コロナ前から長引く経営不振に加え、コロナ禍で同社の販売チャネルの半数以上を持つ百貨店の休業、EC化の遅れが追い打ちをかけました。米国では、紳士服メーカーのブルックス・ブラザーズが7月8日に経営破綻。202年の歴史を持ち、2度の世界大戦を持ちこたえた老舗企業でさえも、新型コロナには勝てませんでした。
そんな中、オーダーメードスーツのD2Cブランドを展開するFABRIC TOKYO(東京・渋谷)は店舗の大半が営業停止したにも関わらず、顧客データを活用してヒット作を生み出したり、オンラインで採寸から購入まで完結する非接触型のサービスを開発したりしました。アパレル企業でありながら、社員の15%がエンジニアだったことが、コロナ禍でも新たなデジタルサービスの開発に着手できた要因でしょう。
またアパレル業界は長年、在庫の超過による「衣服ロス」にも悩まされています。トレンドのサイクルが早く、需要の予測も難しいのが要因の1つです。日経クロストレンド・アドバイザリーボードの1人である・ウォンツアンドバリュー代表でマーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏は、記事「永井孝尚氏『コロナ禍で企業大絶滅期』 本物のマーケターに好機」の中で、「アフターコロナの世界では、消費者の可処分所得は確実に低下する。そうなると、今まで以上に真剣に商品やサービスを見極め、満足いくと判断した物だけにお金を払う消費者が増えるだろう」と予測しています。SDGs(持続可能な開発目標)的な問題に取り組む企業を応援する消費者が出てくるかもしれません。
これらの問題を解決し、アフターコロナ時代に生き残るためには、アパレル業界においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)が必須です。単に、ECにチャネルを持つだけでなく、AI(人工知能)などさまざまなテクノロジーを併用することで、新たなサービスが生まれています。
アパレル業界では、どういったところにテクノロジーを活用してどんな問題を解決しているのでしょうか。その一例を紹介します。

コロナ禍でもデータ活用でヒット生むスーツ店 休業下で次の一手


ECに一工夫

AIとスタイリストが似合う服を提案 アパレル通販の不安を解消
ファッション領域でインターネットサービスを展開するDROBEは2020年3月、AI(人工知能)とスタイリストのスキルを組み合わせたECサービス「DROBE」を開始した。100以上のブランドの10万点以上の商品から顧客の嗜好や体形、予算に応じたアパレル商品をAIが抽出、スタイリストがプロの目で判断して提案、販売する。

新型コロナショックで臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされ、リアル店舗の減収が大きな痛手となっているアパレル業界。この非常事態を乗り切る一手として、今熱い視線を浴びているのが、バニッシュ・スタンダードのアプリサービス「STAFF START(スタッフスタート)」だ。コロナ禍の中でもEC売り上げを伸ばすアパレル企業の秘密とは?

出足好調「コーディネート丸ごと」売るECサイト 衣服ロスを解消
女性向けアパレルブランドを展開するバロックジャパンリミテッドは、トータルコーディネートのみ購入できるECサイト「AUNE(アウネ)」を立ち上げた。アパレル業界で長年問題になっている余剰在庫や焼却処分の削減を目指すと同時に、シーン別で選ぶ新たなファッションの楽しみ方を提案する。
廃棄物から価値を生む

ごみから服を作るブランド auや吉野家の広告も前代未聞の再利用
SDGs(持続可能な開発計画)の先進地域、欧州のサステナブルブランドが「ECOALF(エコアルフ)」だ。海洋ごみから衣服を作るなど、廃棄物のリサイクルにも積極的で、2020年3月、三陽商会と組んで日本進出を果たした。旗艦店「ECOALF 渋谷」の開店広告には、他社の広告を再利用。注目を浴びた。

アパレル廃棄問題に妙手 ブランドタグ付け替えでWinーWin
日本では年間に約29億点のアパレル製品が供給されるが、消費されるのは約14億点。その差、約15億点が売れずに残ってしまうのだという。廃棄される運命のアパレル製品を、ブランド価値を損なわずに再販する仕組みが、FINE(名古屋市)の「Rename(リネーム)」だ。

売れ残り品をデザインで生かす 年25%成長のビジネスモデルとは
「SDGs(持続可能な開発目標)」に注目が集まる前から、“ものを長く使う”ことをテーマに事業展開してきたD&DEPARTMENT PROJECT。SDGs特集の第4回は、全国の繊維産地と協力し、「デッドストック(売れ残り)」を「ライフストック(生きた在庫)」に変えようという取り組みを紹介する。