どうすれば自社(自社商品)のファンになってもらえるのか。企業の多くの人が悩んでいる課題です。オウンドメディア(自社メディア)を活用したファンマーケティングや、ファンコミュニティづくりなど、様々な取り組みが行われています。そんな中、新しい概念として注目を集めているのが「ファンベース」です。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。

(写真/Shutterstock)
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 どうすれば自社(自社商品)のファンになってもらえるのか。企業の多くの人が悩んでいる課題です。オウンドメディア(自社メディア)を活用したファンマーケティングや、ファンコミュニティづくりなど、様々な取り組みが行われています。そんな中、新しい概念として注目を集めているのが「ファンベース」です。

 ファンベースとは、企業やブランドが大切にしている価値を支持する生活者を「ファン」と位置づけ、そのファンをベースに中長期的な売り上げや企業価値の向上につなげていく考え方。ファンベースカンパニー会長の佐藤尚之(さとなお)氏らが提唱をしています。多くの企業では、売り上げの8割を2割の強いファンが支えているといわれており、この既存ファンとの結びつきをより強固にすることが重要です。特に、新型コロナウイルスの影響が色濃く残る中、このファンこそがビジネス継続のための大きな力になるはずです。

 ファンベースの視点でみると、SNSはファンの「愛着づくり」に非常に有効だと考えられます。企業公式Twitterが毎朝あいさつツイートをしたり、ファンや他社アカウントと一見ゆるいコミュニケーションをしていることも、実はこの愛着づくりに直結するものです。

 人気の企業公式Twitterには、必ずといっていいほど、愛されツイートを連発する「中の人」の存在があります。そんな中の人6人に、ファン(消費者)とつながり続ける極意を聞いたビジネス書、『自由すぎる公式SNS「中の人」が明かす 企業ファンのつくり方』(日経BP)を発売しました。

 セガ、キングジム、タカラトミー、タニタ、東急ハンズ、井村屋。企業公式Twitterの日々の努力や工夫を中心に取り上げています。その中には、「企業がファンとどうつながるべきか」という課題に対する大きなヒントがありました。SNS担当者だけではありません。マーケターや商品企画、新規事業開発、PR、広報担当など、さまざまなビジネスパーソンの参考になるはずです。

 既存ファンにより深く商品やサービスを理解してもらうために、ファンベース的なアプローチを強化する企業も増えています。カゴメの自社サイト「&KAGOME」は好例。コアファンとのコミュニケーションの場として機能し、満足度向上につなげています。さらに、このサイトで集めたコアファンの声を新製品開発にも生かすなど、活用の幅を広げています。また、ホテイフーズが工場の一般公開を始めたり、中村屋やアサヒ飲料などが工場併設型の展示施設をオープンしたりすることも、ファンとの濃いつながりを生み出す一つの方法です。コロナ禍でリアルな工場見学は難しい状況が続きますが、今後はVR(仮想現実)技術を活用した体験型オンラインイベントなども広がっていくはずです。

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既存ファンとのつながりを深化する大手メーカー

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カゴメ 動画のライブ配信を本格活用してファンベースを活性化

 カゴメは、自社商品のコアファンからの支持や声を重視するファンベースマーケティングを、特設サイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を軸に2015年から開始。19年には動画のライブ配信を本格的に活用してコアファンへの訴求を高めた。20年からはコミュニケーションアプリ「LINE」を用いて、コアファンへの“移行”にも力を入れる。


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焼き鳥缶詰、本当に炭で焼いていた ホテイフーズの新たな挑戦

 数ある缶詰メーカーのなかで、焼き鳥の缶詰で独自の地位を確立しているホテイフーズコーポレーション(静岡市)。発売から50周年を迎え、「酒のつまみになる保存食」というイメージを打ち破るべく新たな取り組みを始めている。2020年3月から料理にも使える新フレーバー「やきとり塩レモン味」を発売。また現在は新型コロナウイルスの影響で停止しているが、19年から一般消費者向けの工場見学も開始していた。国産鶏肉を実際に炭火で焼いている様子を見せることで、新たなファンの獲得につなげる狙いがあった。


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ナイキの「数万足が瞬時に売れる」“D2C”アプリ キーマン直撃

 ナイキのDX(デジタル・トラスフォーメーション)の象徴とも言うべき、スマートフォン・アプリ「SNKRS」によるシューズ販売。単にアプリを作るだけでなく、さまざまな属性の顧客のトレンドを知り、製品開発にフィードバックする、まさにD2Cの中核的な役割を果たしている。そのキーマンを米ニューヨークのデジタル開発拠点「S23NYC」で直撃した。


デジタルでファンとのつながりを可視化

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試合なきスポーツ界で「投げ銭」急浮上 デジタルで熱意を見える化

 東京五輪・パラリンピックをはじめ、大会や試合の中止または延期に見舞われているスポーツ界。そんななか、伸びているのが「スポーツギフティング(投げ銭)」だ。サービスを運営するエンゲート(東京・渋谷)でのギフティング総額は2020年3月以降、前年同月比約5倍に。その本質はデジタル化による熱意の見える化だった。


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コロナ禍でもアパレル販売2倍 ECに強いカリスマ店員が貢献

 新型コロナショックで臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされ、リアル店舗の減収が大きな痛手となっているアパレル業界。この非常事態を乗り切る一手として、今熱い視線を浴びているのが、バニッシュ・スタンダードのアプリサービス「STAFF START(スタッフスタート)」だ。コロナ禍の中でもEC売り上げを伸ばすアパレル企業の秘密とは?


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無観客演奏会を有料配信した反田恭平氏 クラシック界もDXへ

 2020年3月以降、クラシック音楽の現場では演奏会の中止や延期が相次ぎ、多くの音楽家が演奏の場を失った。人気ピアニストの反田恭平氏も、5月までの演奏会がなくなり、本拠地の欧州にも帰れなくなった。そこで同氏が企画したのが有料ライブ配信による無観客演奏会の「Hand in hand」。反田氏に、クラシック業界初となったチケット制無観客ライブの狙いと今後のクラシック音楽のあり方を聞いた。