モビリティ革命「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」の実現過程で生まれる新たな産業連携モデル、そしてデジタル化された都市・スマートシティへの道筋を徹底解説した新刊『Beyond MaaS 日本から始まる新モビリティ革命 ―移動と都市の未来―』(2020年3月5日発売、日経BP)。ここでは、その連動企画としてMaaS関連の注目トピックスをお届けします。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。

(写真/Shutterstock)
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 Beyond MaaSとは、日経クロストレンドの連載から生まれた造語です。その意味するところは、複数の交通サービスをシームレスに統合するMaaSの概念を飛び越え、異業種との積極的な連携によって新たなビジネスを創造することにあります。自動車業界や公共交通といったMaaSの主たるプレーヤーにとどまらず、全産業にビジネスチャンスが生まれます。

 例えば、複数のモビリティサービスを使い放題にするMaaSのサブスクリプションモデルが実現すると、電気・ガス料金や通信料金、賃貸住宅の家賃、さらにはネットフリックスや飲食サブスクまで、あらゆるジャンルの定額パッケージとの融合が進めやすくなるでしょう。利用特性が異なるジャンルをワンパッケージにすることで、ユーザーの満足度を高めながら、MaaS側と異業種側の事業者が互いに収益を補完・案分していくモデルを築けるはずです。

 また、モビリティサービス側の非効率な部分、つまりピーク時間以外に発生する鉄道、バス、飛行機の空席や、稼働していないタクシー、カーシェアリング車両などを生かすアイデアも有力です。すでに多拠点生活サービスの「ADDress(アドレス)」とANAホールディングスは2020年1月、アドレスの会費(月4万円・税別から)に追加する形で、ANA国内線の指定便を2往復まで利用できるプラン(月3万円・税込み)を発表しました。

 こうしたBeyond MaaSの1つの到達点として見えてくるのが、モビリティ革命を起点とした都市のDX(デジタルトランスフォーメーション)、すなわちスマートシティの実現でしょう。

 この分野では、20年1月、米ラスベガスで開催された世界最大のデジタル技術見本市「CES 2020」で登壇したトヨタ自動車の豊田章男社長が、未来都市構想「Woven City(ウーブン・シティ)」を発表しました。静岡県裾野市にあるトヨタ自動車東日本の東富士工場を閉鎖し、東京ドーム6個分に当たる26万平方メートルの工場跡地を使って、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム、AI(人工知能)技術などを導入・検証できる「未来の街」を造る計画です。

 トヨタにとっては、自ら築くウーブン・シティという「器」を使って、従来の自動車製造だけにとらわれない新たなビジネスモデルを創り出す狙いでしょう。その際にカギとなるのは、異業種との「仲間づくり」です。

 新刊『Beyond MaaS』では、こうしたデジタル化された都市を形づくる有力なピースとなる「MaaS×異業種」のビジネスアイデアを豊富に紹介しています。MaaSを交通分野だけの変革だと思い込んでいると、チャンスを逃すことになりかねません。ぜひ本書を手に取って、全産業にまたがるビジネスインパクトを実感いただければ幸いです。 

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