大企業に加えて、国も積極的にスタートアップによる新産業創出を支援し始めました。ビジネスの新トレンドを探る上で、スタートアップの動向は見逃せない時代になっています。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。

(写真/Shutterstock)
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 国内外を問わず、気鋭のスタートアップに投資する有力ベンチャーキャピタル(VC)やベンチャー支援企業へ取材すると、2020年以降のビジネストレンドがあらわになりました。

 まず、19年に急成長を遂げた「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」関連のスタートアップです。店舗を持たず、商品企画から販売まで主に自社で手掛けるのが特徴で、独自の世界観を巧みに打ち出し、多くのファンを獲得しています。一方で、定額で定期配送するサブスクリプション(サブスク)モデルも急拡大しました。20年以降は、このD2Cとサブスクを組み合わせた新サービスが続々と台頭し、市場の在り方を激変させる可能性があります。

 もう一つビジネスのモデルを大きく変えるキーワードが「従量課金モデル」です。

 その名の通り、使った分だけ課金をし継続して支払ってもらうモデルです。航空機のエンジンメーカーである米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、“飛んだ分だけ”航空会社などに課金するのが特徴。このような課金モデルは、農業分野など実はさまざまな領域にも広がりつつあります。

 テクノロジーとして注目なのが、「距離を超える技術」です。空飛ぶクルマを開発する日本のスタートアップであるスカイドライブ(東京・新宿)は、19年12月に有人飛行試験をついに開始。移動革命へのカウントダウンが始まっています。さらに、ロボットを操って遠隔地で自在に活動できるアバター技術の実用化も目前です。VR(仮想現実)空間へ自由に飛び込めるサービスも続々と登場しており、誰もが瞬間移動し、住んでいる場所を問わず自由に活躍できる世界が迫っています。

 距離を超える技術が一般化することで、社会構造が激変する可能性もあります。移動にかかるコストや時間は極限まで圧縮され、もはやどこに住むかは問題ではなくなります。東京一極集中や地方の過疎化といった社会課題の解決への端緒になるかもしれません。

 ジェームズ・キャメロン監督のSF映画『アバター』では、遠隔地の人造生命体を意識のみで操作する様子が描かれています。スティーブン・スピルバーグ監督作品『レディ・プレイヤー1』では、誰もがVR世界を自在に闊歩(かっぽ)する未来が描かれています。そんな未来が実はすぐそこまで来ています。

「D2C×サブスク」が急拡大 朝日メディアラボ山田氏編


「従量課金モデル」が家電や農機に Plug and Play編


QRコードの次、顔認証が決済の本命に YJキャピタル堀氏編


空飛ぶクルマ、アバター…移動革命始まる

【空の産業革命】ドローン配送や空飛ぶタクシーで輸送が高速化

 厳選したキーワードから、近未来の日本に起きることを予測する特集の6回目は、「空の産業革命」。ドローン配送や空飛ぶタクシーにより、届け先や行き先の自由度が拡大し、移動時間も高速化。空がインフラ化される時代が近づいている。


ANAも参入 「5G+分身ロボット」がビジネスを変えるワケ

 住む場所や身体的な制約から解放される――。大容量かつ低遅延の5G通信は、そんなSF的な未来を一般化する起爆剤となる。5G特集の7回目からは、「距離を超える技術」に着目。遠隔操作できる「アバター(分身)ロボット」や、VR関連サービスがどう生活やビジネスを変えるのか、最前線を追う。


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スタートアップを生むエコシステムが進化する

深セン発!スタートアップ養成所「HAX」上陸 生みの親に直撃

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「変人、オタク大歓迎」 三菱地所が有楽町でスター発掘の謎

 “丸の内の大家”こと三菱地所が、東京・有楽町の再構築に乗り出す。「大丸有(だいまるゆう)」(大手町、丸の内、有楽町)を1つの街とみて、有楽町から日本全国、世界へと羽ばたくスター誕生の仕組みをつくるという。いわく「変人、オタクも大歓迎」。ハードではなく、人を中心に街を変える試みに乗り出した。

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