ネット広告では、年齢や性別といった顧客層を絞ったうえで、広告主が予算に合わせて何人に配信するかを選び、それがサイト訪問や購入にどれだけつながったのかを検証できるのが当たり前です。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。

(写真/Shutterstock)
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 街中の看板やデジタルサイネージでは、そうはいきませんでした。「この街は若者が多い」「この駅は通勤客が多数利用している」といった傾向が分かるだけで「どんな属性の人にどのくらい見せたい」と数値で制御することは難しかったのです。

 そうした看板やデジタルサイネージの弱点を補う位置情報マーケティング(ジオマーケティング、ジオマ)の技術が広がってきました。NTTドコモが51%、電通が49%を出資した「LIVE BOARD」(ライブボード、東京・渋谷)は、ドコモの人口分析サービス「モバイル空間統計」との連携で、デジタルサイネージの周辺にどれだけの人が集まったかを分析します。

 さらに、ドコモのポイント会員の中で許諾を取った人にアンケートを取ることで、広告がどれだけ意識変容につながったのかを検証します。このほか、埼玉高速鉄道の社内ビジョンに取り付けたAI(人工知能)カメラで、車内の人数を把握する取り組みも進めています。ネット広告の仕組みを、リアル世界の看板やサイネージの広告にも拡張しているといえるでしょう。

 家具・雑貨店の「Francfranc」(フランフラン)、東京都多摩市のテーマパーク「サンリオピューロランド」は、通信事業者が提供するスマートフォンの無線LAN(Wi-Fi)接続サービスを通したジオマを使っています。スマホのブラウザーなどでネット広告を配信したユーザーのうち、その後どれだけの人が来店あるいは来場したのかをWi-Fiスポットで検知しているのです。これもネット広告をリアル世界と融合させた取り組み例です。

 モバイル決済の広がりなどによって、オフラインとオンラインを融合するマーケティング戦略「OMO(Online Merges with Offline)」が広がっています。商品の注文や決済だけでなく、2020年はネット広告の分野でも、OMOの広がりが注目されていくのではないでしょうか。ネットとリアルの融合が進むジオマの最新事例のチェックに、日経クロストレンドの記事をお役立てください。

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ネット広告超える位置情報「ジオマ」の成果 ドコモが全方位展開


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Francfranc、Wi-Fiで来店計測 広告見ると来店率62%アップ


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サンリオピューロランド、20万人を呼ぶ「Wi-Fiジオマ」の威力


ビーコンや衛星データの活用も

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アサヒビール、「LINEビーコン×レシート応募」で登録数3倍に

 位置情報マーケティング(ジオマーケティング、ジオマ)の最新事例を追う特集の第2回はアサヒビールだ。同社は2019年のキャンペーンで一部チェーン店の商品棚にビーコンを設置。キャンペーン情報などを配信した。ビーコンを設置した店からの登録数は非設置店の約3倍に達したという。店頭POPやポスターと併用し、売り場で直接応募を働きかけることで、キャンペーンの認知を高め、購買のきっかけにつなげた(関連記事:「場所」から顧客を理解するジオマーケティング)。


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衛星画像で売り上げ分析? 2020年に離陸する宇宙マーケティング

 地球の周りには4000以上もの人工衛星が回っているといわれる。衛星が搭載するカメラやレーダーが地上に届ける情報の中には、民間利用を促すために無償で公開されているものがある。位置情報マーケティング(ジオマ)特集の第5回は、衛星データを使ったマーケティングや新サービスの可能性を追う。


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ギックス、位置情報を使いエリアの価値を示す新サービスを開始

 データ活用支援ベンチャーのギックス(東京・港)が、NTTドコモの「モバイル空間統計」などの既存データを組み合わせ、機械学習で統合することで、土地(エリア)の価値を“見える化”する新サービス「トチカチ」を2019年12月から提供し始めた。JR西日本などが既に採用を決めるなど、引っ張りだこになっている。


さらに広がる位置情報関連サービスの可能性

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地図大手のMaaS戦略 屋内も網羅する「超ピンポイント・ナビ」へ

 「CES 2020」では、モビリティやスマートシティーに関する展示が多数見られた。その中で、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の社会実装に取り組むMaaS Tech Japanの岡部亜門COOが注目したのが、世界的な地図データプラットフォーム“2強”の進化だ。近未来の移動サービスを実現する新コンセプトとは?


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Tポイント、PayPayとの微妙な距離 4大陣営の強みと弱み

 携帯キャリアとの関係を深め、キャッシュレス決済との連係を進めて使い勝手の向上を図る4大共通ポイント。これまでは分からなかった利用者の位置情報や決済情報も集約し、顧客に対する理解をより深めて新たな価値を付与しようともくろむ。新たな会計基準で起きる会計処理の煩雑化を回避できる点を踏まえると、手数料を払ってでも導入するメリットは増しつつある。


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ARとAIを活用 ZEPPELINが新しい3次元広告事業に挑む

 “デジタルイノベーション”の創出を掲げるテクノロジー企業のZEPPELIN(ツェッペリン、東京・渋谷)が、電通デジタル、KDDIと組んで、新たな広告市場の開拓に挑む。2020年初め、都内の商業施設でAR(拡張現実)による巨大広告を映し出すトライアルを開始。20年春以降に、競技場でのスポーツやエンターテインメント分野にも展開する計画だ。