ヒット商品と言えば、かつては“マス”に売るのが重要でした。でも、今や個々人の趣味嗜好が細分化している時代。ターゲットの範囲は狭くても、熱量の高い消費者が集まっている分野でニーズに合った商品を送り出すことがヒットにつながる例は少なくありません。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。
中でも最近増えているのが、“推し”マーケティング。「ファン」よりもカジュアルで、単なる「好き」ではないこだわりがある。そんな推しを持つ人たちに向けた商品は、中規模ながらも根強いヒットにつながる傾向が強いのです。
例えば、完全オリジナルながら興行収入12億円、観客動員数は82万人を超えた劇場版アニメ作品の『プロメア』。公開は2019年5月ですが、SNSでの盛り上がりなどでリピーターを獲得し、全国の一部劇場では長期にわたって上映されました。同年10月には4D版も新たに製作されました。
あるいは、CDショップチェーンのタワーレコード。CDが売れない時代に売り上げを伸ばしています。けん引するのは、スタッフ個人のアーティストへの愛を売り場作りやSNS発信に生かす販売戦略です。渋谷店ではライブで宙を舞う「銀テープ」やラバーバンドをキーホルダーにできるグッズなど、ファンが自分の推しをさりげなくアピールできる商品も販売しています。
こうしたヒットの裏にあるのはファンに寄り添った目線。ファンに近いからこそ、ニーズをくみ取って素早く行動し、共に盛り上がることができます。それがファンの共感を呼び、やがて企画や店舗自体もファンの推しになる。ファンのツボを押さえるマーケティングが自らのファンも増やす循環があるようです。

アニメ映画『プロメア』12億円突破 仕掛け人が語るヒットの裏側

店員の“推し”で熱量高い売り場に 共感を呼び、CD不況でも成長

“推し活”に特化した商品

ニコンがライブ向け双眼鏡発売 ファンは“推し”のカラーで選ぶ
ニコンイメージングジャパンは2019年12月13日、双眼鏡のエントリーモデル「ACULON T02 8x21」「同10x21」を発売した。狙いはずばりライブ需要。そこで効くのが“推し”カラーだ。本体色を決めるに当たり、担当者が日本のアイドルグループ史を遡り、メンバーのイメージカラーを調べたほどの力の入れようだ。

“日本一、手帳を売っている”と言われるロフト。その手帳売り場は、今年の手帳商戦の縮図とも言える。ロフトの旗艦店・銀座ロフトによる今年の注目株は、何をするための手帳か目的が明確な「コンテンツダイアリー」だ。その種類は、多岐にわたる。

59年の歴史を誇る『三省堂国語辞典』が、プロ野球チームとのコラボでヒットを連発している。2018年の「阪神タイガース仕様」に続き、19年の「広島東洋カープ仕様」も好調で、発売からひと月足らずで1万部以上を売り上げた。このユニークな国語辞典はどんなマーケティングから生まれたのか。

1冊5000円、スマホゲームの設定資料集が高くても売れる理由
スマートフォンゲームはそれ自体が大きなビジネスだが、周辺にはイベントや関連グッズ販売など2次的なビジネスも存在する。日経クロストレンドがヤフーの協力を得てECモール「Yahoo! ショッピング」の2019年2月(19年1月21日~2月20日)の購買データをランキング化した結果、スマホゲーム「駅メモ!」関連書籍が、1冊5000円と高額ながら、売れていたことが分かった。
ファン向けコンテンツ開発に注力

入場者が10年で2倍 サンリオピューロランド館長の「対話力」
サンリオピューロランドが、ここ数年で入場者数を伸ばしている。2018年度は開園してから初めて200万人を突破。19年度の入場者数はさらに伸びる見込みだ。ピューロランド館長・小巻亜矢氏に近年の持続的成長の理由を聞いたところ、浮かび上がったのは「対話」というキーワードだった。

ネットフリックスが「日本」を攻略、4K HDRアニメや独自画質に的
米ネットフリックスが日本市場での攻勢を強めている。有料メンバー(会員)数は2019年7月時点で約1億5100万人、190カ国に展開するが、アマゾンやアップル、ディズニー、フールーなど、米国の強力なライバル企業がひしめいている。鈍化する会員数の伸びを解消する切り札に日本企業との連携に乗り出した。