「アマゾン・エフェクト」という言葉に代表されるように、あらゆる物がECで買えるようになり、デジタル起点の破壊的なノベーションが次々と起こる中で、リアル店舗の存続に黄色信号が灯っています。そんななか、リアル店舗とデジタルの関係をうまく再定義し、成功している企業があります。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。

 「アマゾン・エフェクト」という言葉に代表されるように、あらゆる物がECで買えるようになり、デジタル起点の破壊的なノベーションが次々と起こる中で、リアル店舗の存続に黄色信号が灯っています。直近でも、セブン-イレブンが約1000店舗の閉鎖・移転を決め、オンワードホールディングスも展開店舗の約2割に当たる約600店舗の閉鎖を発表し、小売業界に激震が走ったばかりです。

 そんななか、リアル店舗とデジタルの関係をうまく再定義し、成功している企業があります。かつてDCブランドの発信基地として一世を風靡した丸井グループです。この5年、同社は従来の商品を仕入れて売る「百貨店モデル」から、定期借家契約で家賃収入を軸とする「SC(ショッピングセンター)モデル」への一大転換を断行。そして、店舗を持たずにネットで直接消費者に売る新興のD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業や、シェアリングブランドなど、ネットで急成長している企業をいち早くテナントとして誘致してきました。

 こうした新興ブランドが丸井で構える店は、体験型のショールームに特化してレジすらない店舗もあるほど。あくまで販売の主体はネットにあり、店舗はそれを補完するリアルな接点であり体験の場。まさに「売らない店舗」です。従来のリアル店舗の在り方に固執しない逆転の発想で再成長している丸井グループの戦略からは、学ぶべきことが多いはずです。

 もう1つ注目したい企業があります。アパレル店舗のショップ店員が撮影したコーディネート写真に商品情報をひも付け、自社のECサイトやInstagramなどのSNSに同時投稿できるシステム「STAFF START(スタッフスタート)」を提供する、バニッシュスタンダード(東京・港)です。1人のショップ店員によるSTAFF START経由のEC売り上げは月間最高で約3450万円に達し、驚異的な実績をたたき出しています。かつてのリアル店舗の「カリスマ店員」ならぬ、リアルとECで活躍する「オムニチャネル界のカリスマ」が生まれています。

 その背景には、巧みなインセンティブ(成果報酬制度)設計があります。バニッシュ・スタンダードはSTAFF START導入企業に対し、ショップ店員のコーディネート写真経由のEC売り上げのうち、数パーセントを還元することを推奨しており、いくつかの企業がその仕組みを導入しています。例えばインセンティブが3%なら、ECで月1000万円売り上げたショップ店員は、普段の給料に30万円が加算されるということです。このインセンティブ制度がショップ店員個人のやる気を引き出し、導入企業にとっても人材確保の面で優位に立てるメリットがあります。

 従来なら、ECの売り上げは本社のEC部門のものと、リアル店舗とは別事業として扱うのが普通ですから、このインセンティブ設計は画期的です。ECで稼ぐショップ店員が多い店舗なら、必ずしもリアル店舗で販売する必要はなくなり、体験型ショップに徹することも可能でしょう。STAFF STARTの仕組みは、アパレル企業以外にもコスメや家電、食品、生活雑貨、家具インテリアなど、あらゆるリアル店舗に応用できるはずです。

 この2つの事例のように、既存のビジネスモデルを一から見直し、リアル店舗にECの活力をうまく取り込むことが小売業界の次の一手になり得るでしょう。今回は、消費マーケティングの専門ネットメディア「日経クロストレンド」ならではの視点で、「次世代小売り」の姿を理解できる至極の記事を紹介します。

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「Amazon GO」に続け

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