統合型リゾート(IR)実施法が2018年7月に成立して以降、全国各地で経済効果を期待してIR誘致が活発になる一方、治安への影響やギャンブル依存症の増加を懸念する声も強まっている。地域によっては推進派と反対派が賛否を巡って激論を繰り返す。いずれにしろ、早ければ20年にも全国で最大3カ所のIRが認定される見込みだ。日経クロストレンドの記者が新トレンドを解説します。

(イラスト/Shutterstock)
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 統合型リゾート(IR)実施法が2018年7月に成立して以降、全国各地で経済効果を期待してIR誘致が活発になる一方、治安への影響やギャンブル依存症の増加を懸念する声も強まっている。地域によっては推進派と反対派が賛否を巡って激論を繰り返す。いずれにしろ、早ければ20年にも全国で最大3カ所のIRが認定される見込みだ。

 ギャンブルと普段ほとんど縁がない筆者だが、仕事やプライベートで海外のIRを訪れたことが数回ながらある。仕事で言えば、巨大IRが立ち並ぶ米国ラスベガスには、例年正月に開かれる世界最大の家電見本市を取材するため5~6回は渡っただろうか。一方プライベートでは、F1観戦のために2回ほどシンガポールの「マリーナベイサンズ」に、また先日は香港資本のメルコリゾーツ&エンターテインメントがマカオに昨年オープンさせた「モルフェウス」を訪ねてみた。

 いずれにしろ、正直なところカジノにはほとんど出入りしていない。あくまで個人的な意見だが、カジノはIRの構成要素のごく一部にすぎず、それ以外の魅力が世界各国の人々を吸引している原動力になっていると思う。その点を過小評価すべきではないと考える。

 「趣向をそれぞれ凝らして洗練さやホスピタリティーを競うホテル」「ハイブランドからローカルフードまで、老若男女を飽きさせない多様な店舗があり、快適に回れるように工夫したショッピングモール」「言葉が分からなくても誰もが楽しめ、かつ度肝を抜く演出を施したエンターテインメントショー」。この3つこそが、人々の心に刺さっているのだろう。

 例えば先日初めて訪れたモルフェウス。設計見直し前の新国立競技場をデザインした建築家の故ザハ・ハディド氏が手掛けており、大胆な外観は1度見たら忘れられない。見かけ倒しではなく、世界的に知られるインテリアデザイナーのピーター・レメディオスの手でデザインされた客室空間は、驚くほどおしゃれで、しかも細部まで丁寧なこだわりがあった。部屋にいるだけでワクワクしたし、ビックリするほど親切なホテルパーソンの力も手伝って極めて快適な時間を過ごせた。

 意外だったのは、IRのあちこちには現代アートの作品が展示されていたこと。1日かけて見て回るだけでも楽しかったし、ショッピングモールの一画にはデザイン関連の展示コーナーがあり、今までネットでも目にしたことがない斬新な商品ばかりが並び、連日足を運んでしまった。イタリアの高級スポーツカー「ランボルギーニ」とコラボレーションしたスピーカーは見ているだけでほれぼれしてしまう美しさだった(ちなみに、価格は200万円以上)。

 そのほか、水を多用したショー「ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」や、頑張って訪れてみたミシュランの星を持つレストランも、いずれも「そのためだけにもう一度この街を訪れたい」と感じさせるほど筆者の胸を打った。ラスベガスにはラスベガス流、シンガポールにはシンガポール流があるように、マカオらしさを感じさせるIRの姿を追求する姿勢を随所に感じることができた。

 もちろん、日本にIRを上陸させるに当たり、治安やギャンブルへの影響から目を背けて良いはずがない。自治体や地元住民が誠実に議論を繰り返し、多くの人が納得した上で展開しなければ、幸福な街づくりとはほど遠い結果を招いてしまう。ただ、ギャンブル以外にもぜひ目を向けて、正しい情報に基づいてすべてを横串にして是非を問うてほしいと切に願うばかりである。

 IRに関する日本語の情報はまだまだ少ないが、ホテルや巨大ショッピングモール、万人受けするエンターテインメントなど、日経クロストレンドで過去に取り上げたIRの議論に役立ちそうな記事をご紹介する。

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