今や待ったなしの温暖化対策。気候変動の悪影響を大きく受けているエリアの1つがデンマーク領グリーンランドだ。そこに暮らす人々は海洋生物と深い関わりを持ち、漁業はグリーンランドの主要産業でもある。気候変動で現地の漁業環境などはどのように変化しているのか。

グリーンランド人の生活を支える水産業
グリーンランド人の生活を支える水産業

昔も今もグリーンランド人の生活に欠かせない漁業

 グリーンランド先住民であるイヌイットがこの地に住み着いてから、海洋生物は彼らの大切な食料源の1つである。さまざまな食料が国内に流通している現在も、漁は彼らの生活の一部であり、グリーンランドでは車よりまずはボートを購入する人が多いほどだ。職業として漁業に従事する人は全国民の約16%。2010年のデータでは、グリーンランドの輸出品の87%は魚介類と水産加工品だった。それだけに、気候変動が海に与える影響にも人々は大変敏感だ。

 海洋生物の種類は多く、地球に生物多様性をもたらしている。この多様性は自然の生産性、回復力、適応力を維持するために重要な要素である。温暖化の影響により、世界全体ではここ30年間で海洋熱波は50%以上増加した。このままいくと、2100年には海水温が1~4度上昇するといわれている。それが海流に影響をもたらし、魚の分布や海洋生物の生態系を変化させる可能性がある。

 グリーンランドでは2年ほど前から、通常はアイスランド近海にいるサバが東グリーンランドまでやって来るようになった他、今よりも海水温度が高かった1960年代にいたニシンも再びやって来るようになった。これらの現象は、一部の人間にとっては思わぬ“恩恵”とも受け取れる。タラに関しては、成魚になるまで生き残るのが難しくなっている状況が問題になっている。

年々サイズが小さくなっているというタラ
年々サイズが小さくなっているというタラ

 気候変動の問題に対応し、サステナブルな方法で漁業を行うことは、海洋資源を守ること、つまり食料源の維持に直結する。グリーンランドに本部を置くSustainable Fisheries Greenland(SFG、グリーンランド持続可能漁業組合)は、研究者と漁業関係者が協力し、承認された持続可能な方法で漁業を行えるように管理、推進している。グリーンランド天然資源研究所や水産・狩猟・農業省、英ロンドン動物学会と協力し、学術面と現場での現象を検証しながら最善の方法を模索している。この機関では漁師と研究者が出席するセミナーを設け、両者の相互理解を推進している。

 SFGは、Marine Stewardship Council(MSC、海洋管理協議会)というサステナブルな漁業の促進を目的とした、ロンドンに拠点を置く非営利団体とも連携をとっている。MSCは「海のエコラベル」という青いラベルを発行していることで日本でも知られている。MSCの基準に合致した持続可能な漁業でとられた水産物に、そのラベルを付与している。

スーパーに並んだ「海のエコラベル」が貼られた商品。パッケージに印刷された魚のイラストと「MSC」の文字が入った青いマークがそれ
スーパーに並んだ「海のエコラベル」が貼られた商品。パッケージに印刷された魚のイラストと「MSC」の文字が入った青いマークがそれ

 MSCは水産資源を守るため、過剰漁獲、破壊的な漁業、違法漁業への対策も行っている。グリーンランドの水産会社に対しては、特に甘エビ漁業に対して厳しい基準を設けており、過剰漁獲は基準の10~15%までと決められている。その他の魚類に対しても漁獲数などが厳密に設けられている。またこの数値のレギュレーションも、気候変動のリサーチ結果などによって更新される。

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