ファッションブランド各社の環境意識が高まっている。スペインのアドルフォ・ドミンゲスは独自の企業哲学で古くから環境に配慮した商品を展開してきた。そのキャンペーンは単に購入を促すのではなく、消費者に服を買うこと、長く着続けることの意味を問いかける衝撃的なメッセージとなっている。

アドルフォ・ドミンゲスが19年春夏で展開したキャンペーンのビジュアル。「買う前に考えろ」のキャッチフレーズと、ロダンの「考える人」のポーズをとったモデルが印象的
アドルフォ・ドミンゲスが19年春夏で展開したキャンペーンのビジュアル。「買う前に考えろ」のキャッチフレーズと、ロダンの「考える人」のポーズをとったモデルが印象的
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関心高まるファッションが与える環境へのダメージ

 あなたのクローゼットに、これまで数回しか着用していなかったり、長い間着ていなかったりする服がどれくらい眠っているだろうか。ファッションは自分の個性や特徴を表現する大切な手段だ。しかし、我々がファッショントレンドを追いかけ消費することで、地球環境に大きなダメージを与えていることも忘れてはならない。ファッション業界は石油産業に続いて、地球環境への影響が高いといわれている業種だ。

 年々目にすることが多くなった「SDG's(持続可能な開発目標)」や「サステナビリティー(持続可能性)」といった言葉。有限である資源や環境を考えることは、日本人にとっても身近だ。日常的に必要とし環境に直結するものといえば、食品や電気、ガスといったエネルギーだが、衣類もまた必要不可欠な要素の1つだろう。

 2008~09年の間にスウェーデンの「ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)」や米「フォーエバー21」が日本に上陸したことで、ファストファッションの一大ブームが起こったことは記憶に新しい。ファストファッションの普及や新興国の経済発展による中間所得層の増加で、衣類の生産量は00~14年の過去15年間で2倍に増加した。その一方で、製造された7割以上の衣類が破棄されているという問題も浮上している。衣料品業界が排出するGHG(温暖化ガス)は年間約12億トンで、これは全世界の国際航空便と船舶を合わせたGHG排出量を上回っている(エレン・マッカーサー財団調べ)。

 ファッション業界が環境に与えるダメージに影響を受け、10年ごろから「エシカルファッション」というキーワードが浮上するようになった。エシカル(Ethical)とは、倫理的、道徳上のという意味を持つ英単語だが、エシカルファッションという言葉は商品生産に関わる人や環境に配慮したファッションのことを指す。「ステラ・マッカトニー」をはじめ、「エルメス」「フェンディ」などのハイブランドをはじめ、H&M、「ユニクロ」といったファストファッションのブランドなど多くの有名ブランドが、このエシカルファッションへの取り組みを始めた。

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