重い・ダサいはもう古い! スマホ連動の補聴器

 以前、筆者の祖父が難聴になり、家族が補聴器を購入したことがあった。しかし祖父は音量調節や付け心地が気に入らず、結局1、2回付けただけでその後は使用することはなかった。家では映画館かと思うようなボリュームでテレビを見ていて、家族から苦情を受けていたことを思い出す。そんな出来事から、筆者自身も補聴器に対して、どこか煩わしいものという見方をしていた。

スマホと連動した人気の補聴器
スマホと連動した人気の補聴器

 イストーク・オーディオが販売する補聴器にはさまざまなデザインや形状があり、3Dプリンターで色や形を個人の耳に合わせて作ることもできる。デバイス自体は軽量で、コンパクト。さらにスマホのアプリと連動し、充電や音量調整が可能。レストラン、コンサートホール、会議室、地下鉄など、シチュエーションに合わせて簡単に音量やノイズを調整できる。一度補聴器を作れば耳の形などのデータが保存されるため、修理なども非常にスムーズに対応できる。

耳型を取り、3Dプリンターで個人に合った補聴器を作る
耳型を取り、3Dプリンターで個人に合った補聴器を作る

 空港にある難聴者のためのインフォメーション誘導システムも、イストーク・オーディオ製で、モスクワのシェレメチェボ国際空港などに設置されている。補聴器に搭載されている無線装置を通して、この看板に近づけば、空港内のアナウンスが聞こえる仕組みになっている。

モスクワのシェレメチェボ国際空港にあるインフォメーション誘導システム(カウンターの上に置いてある四角い機器)。ここに近づくと全体のアナウンスなどが無線装置を通して聞こえてくる
モスクワのシェレメチェボ国際空港にあるインフォメーション誘導システム(カウンターの上に置いてある四角い機器)。ここに近づくと全体のアナウンスなどが無線装置を通して聞こえてくる

 難聴者に対する製品は補聴器だけではない。「スマートハウス」と呼ばれる、音が感知できない人が生活に困らないよう設計された家だ。「センス」という製品を使い、水漏れ、ガス漏れ、子供が泣いている声、人の侵入などさまざまなリスクを、振動や光によって感知できるシステムである。現在ロシア国内、デンマークをはじめとする欧州諸国で販売しており、日本では大手医療機器メーカーとの協業を検討中とのこと。

スマートハウスに使われる水漏れなどを感知する「センス」
スマートハウスに使われる水漏れなどを感知する「センス」

0歳からアプローチする独自のマーケティング

 イストーク・オーディオのマーケティング戦略は、医者や専門家に対する製品情報の提供、お客との距離を縮めるためのSNS活用(ロシアではインスタグラムとフコンタクチェの利用者が多い)、国内のセンターや販売拠点におけるサービス提供など幅広い。中でも力を入れているのが、難聴検査とリハビリテーションを通したマーケティングだ。

 同社は12年にロシア保健省の要請に基づき、聴力検査のプログラムを開始した。検査内容は子供が生まれて3日までの間に聴力を調べるというもの。検査で難聴の疑いがあれば、2カ月の間に医療機関へ行き、再検査する。一連の検査によって難聴度合いが分かるため、補聴器の購入につながるのだ。

 実際、幼少期は難聴の察知が非常に難しく、ほとんどの親は子供がある程度成長するまで難聴であることに気づかないケースが多い。なかなかしゃべらない、問いかけに対しての反応が鈍いなど、異変に気づいたときには、耳が聞こえていなかったというケースがよくあるそうだ。生後3日以内に行われる聴力検査でより早く問題を発見し、リハビリや他の手立てを打てる画期的な制度である。

 現在、ロシア国内200都市でこの検査制度が実施されている。将来は聴力検査だけでなく視力検査もできるよう、現在ロシアの保健省と話を進めている。