「支付宝(アリペイ)」を運営するアントフィナンシャルが計画していた、上海、香港への株式上場が延期になった。ただ、それでもアントが2010年代の中国のDX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引した存在だったことは確かである。アリペイの何がすごいのか。データの視点から明らかにしていきたい。

アントフィナンシャルが提供するアリペイは中国経済の姿を変えた(写真/Shutterstock)
アントフィナンシャルが提供するアリペイは中国経済の姿を変えた(写真/Shutterstock)

アントフィナンシャル上場延期

 アリババ集団の関連企業であるアント・フィナンシャル・サービス・グループ(螞蟻金融服務集団、以下アント)は2020年11月3日夜、計画していた上海証券取引所と香港証券取引所への新規株式公開(IPO)を延期すると発表した。計画では同月5日にも両市場へ上場する予定で、調達額は事前の予測では両市場で合計約345億ドル(約3.6兆円)に達していた。

 報道によれば、上場を延期した理由の詳細はまだ不明である。しかし、今回、上場を延期したとしても、アントが10年代の中国のDX(デジタルトランスフォーメーション)をけん引した存在であることは確かだ。

 予測されていた企業価値の背景にあるのは、周知のモバイル決済アプリ「支付宝(アリペイ)」の普及である。淘宝(タオバオ)のEC(電子商取引)サイト「淘宝網(タオバオワン)」の決済システムとして始動し、その初期には紙のノート上で振り込み失敗や返金といった決済上のトラブルをメモしていたという、アナログ極まる船出であった(写真、および廉薇・辺慧・蘇向輝・曹鵬程著『アントフィナンシャル 1匹のアリがつくる新金融エコシステム』みすず書房、19年参照)。

 しかしその後のアリペイシステムの更新は著しく、13年には3億人の登録ユーザー、うち1億人はモバイルアカウントを持つに至り、PayPalを超える決済額を記録している。19年6月時点でユーザー数は12億人を突破している。今回の上場延期も、表向きの介入理由は融資サービスを巡る金融リスクへの対処だが、拡大を続けるアントフィナンシャルの影響力を当局が恐れたとの見方もある。

06年8月25~26日のアリペイ取引上の異常を記録したノート。取引用の複数の口座合計で、現金は31万元(約452万円)程度であった(18年5月28日、アリババ集団本部にて筆者撮影)
06年8月25~26日のアリペイ取引上の異常を記録したノート。取引用の複数の口座合計で、現金は31万元(約452万円)程度であった(18年5月28日、アリババ集団本部にて筆者撮影)
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