複数のビルが連動して光り、1つの映像を映し出す風景は中国の風物詩だ。この風景を支えているのは、深センの北に隣接する東莞市にあるベンチャー企業のWORLDSEMIが開発しているLED製品。同社はプログラム制御がしやすく、安く、電力効率の良いLED製品を武器に、2013年から出荷量を急速に伸ばしている。この開発には、製造と企画の工夫を1人の人物が差配する、まるで米アップルのモノづくりのようなプロセスがある。中国の製造業は、部品や素材についても進化を続けている。
LEDそのものをアップデートしたWORLDSEMI
2014年に中村修二博士らが青色LEDの開発でノーベル物理学賞を獲得したように、LEDは20世紀の大発明の1つだ。電球や蛍光灯よりも効率的に電気を光に変えてくれる。寿命が長く、いろいろな光が出せる。当初は高価だったが、さまざまな技術革新と量産効果によって、今は低価格化が進んでいる。
LEDの光る色や光り方を変えるには、フルカラーのLEDに流れる電流量を変える必要がある。電流量の制御にはマイコンを使う。つまり、それぞれのLEDを電源とマイコンにつなげる必要があり、大量のLEDをそれぞれ制御しようとすると回路は複雑になり、そのぶん電力効率も悪くなる。
WORLDSEMIが販売しているLED製品は、3線または4線の電線にLEDを直列につなぎ、その線に制御信号を流すことで大量のLEDを個別に制御できる。制御信号を解釈してLEDに流す電流量を変える制御回路を、あらかじめLED製品の中に組み込むことで、「普通のLEDと同じようなサイズと価格」と「個別の制御」を同時に実現している。日本円に換算してわずか数円で売られている目立たない部品だが、素晴らしい製品だ。


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