2000年代まで、つまり「スマートフォン以前」の時代に中国に長期滞在した経験を持つ人ならば、当時の国有銀行や政府部門での手続きの煩雑さに疲労困憊(ひろうこんぱい)した経験を持っているだろう。半日、地方政府の建物で待たされた揚げ句に行政手続きのたらい回しにあうこともあったし、それは外国人でも中国人でも同様だった。近年では中国国内の身分証を持つ場合には利便性が高まりつつあり、スマートフォンのミニアプリなどを使い、Eガバメント化が急速に進んでいる。

進む行政手続きのオンライン化

 中国ではデジタル化の基礎インフラとして第2代身分証(ICを内蔵したもので2004年から発行、13年に完全移行)による個人認証が普及し、人々が日々利用する基幹的なスマホアプリ、いわゆるスーパーアプリとこの第2代身分証が接続されることで、社会インフラ化してきた。

 最近では「スマホで手続き」(掌上弁公)、「民衆を走らせずデータを走らせよう」(譲群衆少跑腿譲数据多跑路)といった言葉が、Eガバメントのスローガンとなっている。依然として濃淡はあるものの、手続きのオンライン化は急速に進んでいる。

 オンラインを活用した行政広報・手続きは、地方政府のポータルサイトに情報がまとめられている。例えば広東省のポータルサイトでは、政府の各種政策文書が集約されている他、行政手続きとしては社会保障費関連(積立額、受取額の明細照会)、医療・養老保険関連(加入証明の発行、医療保険料の支払い、養老保険の資格発行)、失業保険金の申請と受け取り、住宅積立金の照会など、合計数百項目の照会と手続きが可能となっている。この他に法人向けの各種手続きにも対応し、19年8月以降のデータでは、毎月300~1000万件の手続きを受け付けている状況だ。

 こうしたポータルサイトでは、ユーザーからのフィードバックも公開されている。好評価の理由を見ると、「1つの窓口で、1度の手続きで完了した」という回答件数が最多だ。その一方で、低い評価をしたユーザーの理由も閲覧でき、「理由なしに法定手続き時間を超えた」、「手続き説明書に記載されていない追加的な審査条件を提示された」など、生々しい回答も掲載されている。

 課題も残っているものの、オンライン化に伴って、行政部門ごとの具体的な受付手続き件数や満足度を測ることがより容易となっている。さらに、個人でも容易に投書ができることで、末端の役人にとっても自分のサービス水準が可視化され、「悪いサービス体験は提供できない」という圧力がかかることになる。行政サービスの改善にもつながる可能性が高い。

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