2020年3月に5Gサービスを開始した日本の主要3キャリアが採用したスマートフォンのラインアップを見ると、中国勢の攻勢、とりわけ価格競争力に秀でるシャオミの存在が目立つ。ハードウエアの低価格化を武器にしながら、モノをインターネット経由でAI(人工知能)にアクセスできるようにすることで、あらゆるモノをスムーズに動作させることを目指した「AIoTエコシステム」の立ち上げを狙う同社の強さの源を解き明かす。
2020年3月、日本の主要3キャリア(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)は相次いで5Gの商用サービスを開始した。実際のところサービスエリアがごくわずかであること(東京都内であっても面積比で1%以下である)に加え、新型コロナウイルスの話題に押されたこともあり、世間の反応はいまひとつという印象がある。
サービスの開始に合わせて各社は5Gスマートフォンをラインアップした。その製造元を見ると、中国勢の攻勢が目立っている(下表参照)。大手キャリアが取り扱うスマホとして、ZTEが3年ぶり、シャオミとOPPOは初めての登場となる。
この躍進の大きな理由に価格競争力があるだろう。シャオミ機種の取り扱いについてKDDIは、「シャオミのスマホは優れた品質と競争力のある価格設定が特徴」と述べている。今回発表された「Mi 10 Lite 5G」は、欧州向けの同機種で349ユーロ(約4万2000円)とアナウンスされている。本機種はミドルレンジの位置付けであり、3Dグラフィック性能などを抑えているとはいえ、日本や韓国メーカーが発売する5Gスマホが軒並み10万円を超えている中、シャオミの割安感が目立つ。本稿ではその理由を解き明かしていく。
5Gスマホの利益は1台たったの1000円
20年3月31日に発表されたシャオミの2019年通期の決算資料を見ると、シャオミの売り上げは2058億人民元(約3兆1300億円)に及ぶ。そのうちスマホ部門の売り上げは1133億人民元(約1兆7300億円)と、売り上げに占める比率が半分を上回る規模だ。このドメインの粗利益率は7.2%であり、粗利の約6割が営業や研究開発のコストとして出ていくため、売り上げの3%弱が純利益として残る。冒頭の5Gスマホの例で言えば、1台売ったところで1000円強の利益にしかならないのだ。
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