中国湖北省の武漢市から広がった新型コロナウイルス。感染を少しでも食い止めようと往来の制限や公休日(春節休み)の延長などが行われている。感染防止対策や感染者への支援では、5Gなどデジタルを活用した様々な取り組みが行われている。このスピード感には日本が学ぶところも多いだろう。

中国・武漢市に突貫工事で建設された「火神山病院」では、5G技術を活用して患者の容体のモニタリングなどが行われる(写真提供/新華社/共同通信イメージズ)
中国・武漢市に突貫工事で建設された「火神山病院」では、5G技術を活用して患者の容体のモニタリングなどが行われる(写真提供/新華社/共同通信イメージズ)

 新型コロナウイルスのような感染症の流行を食い止めるには、早期に感染者を特定し、隔離することが重要だ。しかし、診療できる人数には限界がある。中国では新型コロナウイルスの感染拡大とともに、簡易的な遠隔診療サービスが広がりを見せている。いくつかの医療情報アプリが「チャット問診」のサービスを始めたのだ。

 例えば大手生命保険会社の中国平安保険が提供する「平安好医生(PingAn Good Doctor)」はトップページに「感染症問診センター」を設置、タップするだけで医者とチャットができる。専用の機器や会員登録は不要だ。筆者が試したところ、居住地(深セン)でも武漢でもない地域の医者に接続され、会話することができた。新型コロナウイルスの流行は地域によって濃淡があることから、比較的流行の程度の低い地域の医師がチャット問診を手伝っているものと思われる。

平安好医生(PingAn Good Doctor)の「コロナウイルスホットライン」ページ。画面中央のオレンジ色のボタンは「病院に行く必要はありません。オンラインで医者に相談しましょう」と書いてある。タップすると医者と連絡がとれるチャットが起動する
平安好医生(PingAn Good Doctor)の「コロナウイルスホットライン」ページ。画面中央のオレンジ色のボタンは「病院に行く必要はありません。オンラインで医者に相談しましょう」と書いてある。タップすると医者と連絡がとれるチャットが起動する

 もっともこの仕組みではあくまで初歩的な問診にとどまり、発熱やせきなどの重い症状があったり感染者と接触した可能性が高いと判断されたりすれば病院に行くように指示される。

 ただ、このスピード感には見るべきところがあるだろう。遠隔診療の研究は日本をはじめ世界各国で行われているが、交通不便な過疎地などを対象に「医師が赴かなくても診察が完結する」ことを目標としたプロジェクトが多い。それを実現するためには高解像度なカメラや電子カルテ、電子処方箋などの多くのシステムが必要となり、思い立ってすぐに使えるようなものではない。

 感染者に関する情報共有でも、ネットサービスが一役買っている。万一感染者が出た場合に接触者を割り出せるよう、中国の多くのマンションでは検温や入退管理が行われている。QRコード生成サービスの「草料二維碼(cli.im)」は、スマホから簡単に記帳作業を行えるサービスを開始し、現在無料で提供している。居住区への入場者はWeChatでQRコードを読み取り、スマホから現在の体温や所見を入力するだけで記入は完了。連絡先電話番号や位置情報はWeChatのAPIから取得されるので入力を必要としない。

「草料二維碼」が公開している新型コロナウイルス対策の記帳テンプレート。「マスクをしている状態を自撮りして提出せよ」といった、感染対策の徹底につながるフォームが揃っている
「草料二維碼」が公開している新型コロナウイルス対策の記帳テンプレート。「マスクをしている状態を自撮りして提出せよ」といった、感染対策の徹底につながるフォームが揃っている

 こうした個人のスマートフォンを活用した遠隔問診や安否報告作業は日本ではまだ見られない。日本では、非常時向けのサービスを展開する際、インターネットにアクセスできない人への考慮や、高い信頼性が求められることが多い。完璧な運用を重視するあまり、既に利用可能な環境が整っている人に対してもサービスが提供されるまで相当な時間がかかるのだ。

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