新しく開発された技術を搭載したプリント基板(PCB)が中国メーカーから続々と出てきている。これを支えるのが、以前はコピー商品を世に送り出してきたハードウエアのエコシステムと、西洋的なオープンソースハードウエアの考え方。この2つを組み合わせたのが、深センでPCBの受託生産や販売を行うSeeed Technologyだ。
前回の記事(参考記事「中国のオープンソースのハード開発を支える急成長企業Seeed」)で紹介したように、2015年に中国政府は「大衆創業・万衆創新」政策をスタートさせた。それまで大企業重視、エリート重視だった中国の政策の中では珍しく、草の根からの起業重視、アントレプレナーやスタートアップを重視したものだ。起業やベンチャーキャピタル開設の手続きを簡素化するなどの規制緩和と、メイカースペースの開設などに対する補助金などの政策をセットにした。規制緩和などの政策は今も続いていて、中国を起業が盛んな国にした1つの要因になっている。
その方向性自体は間違っていないが、14年当時まで西洋的な「メイカー」がほとんどいなかった中国で無理やりメイカームーブメントを起こすのは無理があった。Seeedの社長であるエリック・パン氏は、中国政府の期待に応えようとしつつも、「今、深センには200カ所のメイカースペースができたらしいが、僕は深センのメイカーを200人も知らないぞ」など、メイカーバブルのまっただ中でも警鐘を鳴らしていた。15年のメイカーフェア深センでも、エリック氏は、「よく知られるということは、よく誤解されるということでもある。深センでは、『メイカー』という名前がはやりすぎて、『メイカーヘアサロン』というものまで出てきた。もちろん名前だけのものだ」というスピーチを行った。彼が語ったように、粗製濫造されたメイカースペースは、3年後に補助金が終了するとバタバタと潰れた。
一方で、この数年間、オープンソースのハードウエアを基に、これまでになかったアイデアを自ら形にしていく、西洋的な意味でのメイカームーブメントは、しっかりと中国に根付きつつある。14年ごろは、中国製のオープンソース開発ボードといえば、欧米で作られたもののアレンジにすぎなかった。それが近年は、中国国内から多くのオープンソースハードウエアが登場している。AIやロボットの分野では、中国発のボードが世界の最先端であることも珍しくない。Seeedのウェブサイトにも、多くの中国製開発ボードが掲載されている。
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