ビットコインなど仮想通貨(暗号資産)に用いられるブロックチェーン技術。中国では、薬の処方箋情報や司法の文書の管理など、公共機関で技術を活用する例が増え始めている。改ざんを防げる高い信頼性と、異なる集団とデータの共有が可能というメリットを生かし、情報の管理や取引コストを低減する狙いがある。
ブロックチェーンの代表例としては、「ビットコイン(BTC)」や「イーサリアム(ETH)」などの仮想通貨(暗号資産)が有名だ。その根幹にあるのは、複数の当事者間で合意されたルールに基づく台帳を共同管理する「分散共有台帳技術」。仮想通貨は、口座ごとの通貨保有量を管理した台帳で実現したアプリケーションである。
広大な領土と人口を持つ中国では、取引に複数の当事者が関与することも珍しくなく、それに伴う品質の低下やコストの増大が問題視されてきた。こうした背景をもとに、中国では仮想通貨以外へのブロックチェーン技術の社会実装が進みつつある。
1つ目は薬の処方箋だ。中国では今後、日本以上に高齢化が進行するといわれており、医療費の圧縮は大きな関心事となっている。そんな中、遠隔医療と併せて処方薬のオンライン販売の検討が進められている。
処方薬には抗がん剤や医療用麻薬なども含まれるため、第三者による詐取や過剰摂取を防ぐために処方プロセスに高度なセキュリティーが求められる。また医院と薬局、またオンライン治療プラットフォームはそれぞれ別のシステムで稼働しており、リアルタイム処理のための改修には多額の投資と実施期間を必要とする。
そこでアリババ集団は、処方箋をブロックチェーン上で処理する「電子処方箋チェーン」を開発し、杭州市内の病院でテスト運用を行っている。ブロックチェーンによって構築された分散共有台帳は「改ざんの防止」と「一意性」が担保されているため、同一の処方箋は一度きりしか使用できないようになっている。また処方プロセスにおいて担当した薬剤師や投与された薬剤のロット番号などもブロックチェーンに追記され、医師や保険会社などが後から参照することも可能だ。
ブロックチェーン技術の活用は公共分野でも進められている。中国の最高裁判所に当たる中国最高人民法院は2019年、「司法鎖」と呼ばれる裁判情報の共有台帳システムを稼働させた。裁判の訴状や判決文、証拠書類などがその対象であり、その書類がいつ、誰が誰に対して提出したものなのかが記録されている。これにより司法プロセスの効率化が図られるようになり、判決に要する時間を短縮することができるようになった。
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