2019年9月に華為技術(ファーウェイ)が開催したイベント「Huawei Connect 2019」。米国政府の制裁により、米グーグルやマイクロソフトのソフトウエアが使えなくなる中、同社が打ち出したのが、独自ソフトウエアのオープンソース化だ。米国企業に依存しないエコシステムの構築が狙いだが、中国企業の多くがオープンイノベーションの利点を身をもって体験している点も見逃せない。

(写真/Shutterstock)
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 オープンソースは中国の敵か味方か――。2019年9月18日から20日にかけて中国・上海で開催された華為技術(ファーウェイ)のイベント「Huawei Connect 2019」の取材中、こんな感想が浮かんできた。というのも、米国政府からの制裁に苦しむ ファーウェイは、オープンソースを武器に米国に立ち向かおうという姿勢をあらわにしていたからだ。

 よく知られているとおり、制裁によりファーウェイは米国企業からの製品、サービスの調達が困難になっている。19年9月19日に発表された最新スマートフォン「Mate30」シリーズは、OSそのものはアンドロイド・オープンソース・プロジェクト版のアンドロイドで、カメラを中心に最高のハードウエア性能を有している。しかし残念ながらGメール、Googleマップなど米グーグルが提供する「グーグル・モバイル・サービス」と呼ばれる一連のソフトウエアの使用が禁止されたため、搭載されていない。

 スマホ以上に厳しい環境に置かれているのがパソコンだ。正式な発表はないが、米マイクロソフトからウィンドウズの提供が受けられなくなったもようだ。今春発売予定と噂されていたARM版ウィンドウズ・タブレットの発売が中止されるなど、ファーウェイのパソコン事業はストップしてしまった。オープンソース版があるアンドロイドとは異なり、ウィンドウズパソコンの新規発売禁止は致命傷だ。

 ファーウェイが開発を進めているという独自OS「ハーモニーOS」はスマホ、パソコン、IoTなどさまざまな機器に対応するとの触れ込み。ハーモニーOSの開発完了まではパソコンの開発もストップするのかと思われていたが、Huawei Connectで新たな動きがあった。

 それはファーウェイが自社開発するARMコアのCPU「Kunpeng」を搭載したPCボードの発売と、ファーウェイのLinuxディストリビューション「Euler OS」のオープンソース化の発表だ。両者を組み合わせれば、インテルのCPUとマイクロソフトのOSに依存しない、すなわち米国企業のプロダクトに依存しないパソコンの開発が可能となる。Huawei Connectでは、大手パソコンメーカーの清華同方がKunpengを使ったデスクトップパソコンを発売する方針を示した。将来的にはノートパソコンも発売されるとみられる。ファーウェイが中国で運営する公式オンラインショップでは、既にLinux版ノートパソコンの販売が始まった。これはインテルCPUを搭載した機種だが、将来的には自社開発のKunpengが採用されるだろう。

ファーウェイのLinuxノートパソコンを手にする、中国ソフトウエアメーカー「Deepin」の張磊CTO(最高技術責任者)。DeepinはLinuxベースのオペレーションシステムを開発するほか、ウィンドウズアプリのLinuxへの移植サポートを手がける。Huawei Connect2019でファーウェイとのパートナーシップ提携を発表した
ファーウェイのLinuxノートパソコンを手にする、中国ソフトウエアメーカー「Deepin」の張磊CTO(最高技術責任者)。DeepinはLinuxベースのオペレーションシステムを開発するほか、ウィンドウズアプリのLinuxへの移植サポートを手がける。Huawei Connect2019でファーウェイとのパートナーシップ提携を発表した

 さらに、19年春に発表されたばかりのファーウェイのデータベース管理システム「GaussDB」のオープンソース化も発表された。MySQLなど有力なライバルがひしめく分野だけに、オープンソース化することによって利用者を拡大して競争に勝ち抜こうという方針だ。

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