スマホアプリでタクシーを呼び出し、弁当のデリバリーが受けられる。こうした光景が中国の街角で当たり前になったのは、既存のタクシーや個人経営の食堂に、「滴滴出行(ディディ)」や「餓了麼(ウーラマ)」といったプラットフォームが浸透したからだ。既存産業を新たなテクノロジーで置き換えようとする米国流とはアプローチが大きく異なる。

中国で広がる弁当のデリバリーサービスは、ユーザーと個人経営の食堂双方にとって、なくてはならない存在になっている
中国で広がる弁当のデリバリーサービスは、ユーザーと個人経営の食堂双方にとって、なくてはならない存在になっている

 GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)に代表されるプラットフォーマーの台頭に対する脅威論が、世の中をにぎわせている。米アマゾンは既存の小売産業をネット通販で置き換えると言われ、米ウーバー・テクノロジーズのライドシェアプラットフォーム「Uber」は世界各国で当局やタクシーの業界団体との対決を生み続けている。

 ところが、中国に目を向けると状況は大きく異なる。中国版Uberと言われ、ディディが運営するサービス「DiDi」では、既存のタクシーの運転手も、ライドシェアのフリーランスと同じように配車アプリをスタンバイして乗客を獲得している。小規模な食堂は、ウーラマが運営する「eleme」などのデリバリーアプリに登録し、座席の数を大きく超える数の弁当を売ることが可能になった。このように、既存産業をうまく取り込みながら成長を続ける中国のプラットフォーマーの戦略から学べる点は多い。

 米国で生まれたUberやLyftなどのライドシェアサービスは、スマホアプリを使い、自動車を保有するドライバーと、移動したいユーザーをマッチングする。この形態は日本ではいわゆる「白タク行為」に該当するため禁止されているほか、既にライドシェアがサービスされている地域でも既存産業たるタクシー業者による不満の声が高まっている。

 DiDiもまたUberやLyftのようにスマホを用いて配車を依頼できるアプリであるが、ライドシェアに限定するのではなく、タクシーにもテクノロジーを供与している点が大きく異なる。なぜならDiDiは、「スマホユーザーのための移動プラットフォーム」と位置付けられており、多くのユーザーは「ライドシェアに乗りたい」のではなく「目的地に速やかに移動したい」からだ。そのニーズに応えられるよう、DiDiではタクシー、ライドシェア、ハイヤー、相乗り自動車を同時に呼び出し、最も早く応答した交通手段を提供する機能がある。

 また、当地の交通規則、過去の統計などをAI(人工知能)で分析し、適切な乗車地点や降車位置を提案する機能や、経路や高速道路の利用有無を、アプリを通じて運転手に伝える機能もある。

DiDiではタクシー(出租车)、相乗り(拼车)、ハイヤー(专车)など、既存のサービスを含めて横断的に車両を手配できる
DiDiではタクシー(出租车)、相乗り(拼车)、ハイヤー(专车)など、既存のサービスを含めて横断的に車両を手配できる
DiDiでタクシーを呼んだところ、待ち合わせに最適な場所を案内された。乗車後の経路指定も手元のスマホから行える
DiDiでタクシーを呼んだところ、待ち合わせに最適な場所を案内された。乗車後の経路指定も手元のスマホから行える

 こうしたテクノロジーにより、交差点付近の危険な場所でタクシーを乗り降りする事例を減らしたり、当地に不慣れだったり会話に不自由だったりする乗客が、スマホの手助けを得ながら運転手とコミュニケーションを取れるようになるなど、乗客と運転手の双方にプラスの効果をもたらしている。UberやLyftがライドシェアのみを相手にした結果、タクシー業界の革新が停滞している欧米の現状と対極的である。

 ウーバーは2018年から、日本でタクシー配車事業に参入している。これは日本の法規制でライドシェアが認められていないからで、同社の事業展開としては特殊な事例だ。

街の食堂の「持ち帰り」文化がフードデリバリーサービスへと進化

 中国では個人経営の食堂が多くあり、店員に「打包(ダーバオ)」と声をかければ料理を使い捨て容器によそってくれる。このように多くの店が持ち帰りに対応していたものの、スタッフ確保の難しさから出前配達をしてくれる店は限られていた。

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