Eコマースの急激な広がりに伴い、物流がボトルネックとしてクローズアップされているのは、日本も中国も同じ。中国ではアリババ集団傘下のスタートアップが、物流システムの開発に乗り出している。ポイントはラストワンマイルは届けないという「割り切り」と、需要予測や最新の住所録整備といった「作りこみ」だ。
Eコマースの普及の一方で、ボトルネックとなるのは現実に商品を自宅まで宅配する物流である。半導体性能の持続的向上によってビットの世界が広がる一方で、実物(アトム)の世界との接点、特にラストワンマイルの輸送に問題が集約された。これは日本も中国も変わらない。中国政府統計によればEコマースの規模は2010年代に前年比で30%を超える急拡大を続け、現状で世界最大の市場規模となっている。これに伴い、宅配便の配達件数は、爆発的な増加を記録している。宅配便の取扱件数は、2008年時点では日本よりも少ない15.1億個であったが、17年には400億個、そして18年には507億個に達した。人口1人当たりで年間1個程度から、わずか10年で30倍以上となったのだ。
加えて中国では11月11日の「独身の日」に代表されるようなセール期間を設け、あえて需要を集中させるようなマーケティング戦略も採用された。
実のところ、中国のEコマース業界でも物流は長年ボトルネックであり、購入した商品が宅配業者の倉庫にあふれ、いつまでたっても記載された住所に届かない状況が発生していた。中国在住経験者の中には、自ら宅配業者の末端ステーションを訪れて、そこに無造作に置かれた商品群から、自分宛ての商品を探した経験があるかもしれない。自社流通を手掛ける京東集団(JDドットコム)は宅配まで自社で管理し、高い顧客満足度を目指す企業として知られている。しかし、そんな同社でも、筆者が商品を取りにいったときにステーションで広がっていた光景は、乱雑を極めたものであった。
「ラストワンマイルを届けない」という割り切り
それでも中国の物流システムの全体に目を向けてみると、近年急激にアップデートされつつある。なかでもアリババ集団傘下で、深センに設立された菜鳥網絡(ツァイニャオ)の「割り切り」と「作りこみ」のアプローチは興味深い。
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