サントリーの飲料ブランドは型破りな派生商品を次々に投入し、ブランドを活性化してきた。この方法は、「サントリー天然水」以外のブランドでも共通している。今回は、「GREEN DA・KA・RA(グリーン ダカラ)」と「伊右衛門」に焦点を当て、派生商品の開発プロセスを解説する。

「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」。180g缶入の濃縮タイプの麦茶で、水で薄めて1~2Lにして使用する
「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」。180g缶入の濃縮タイプの麦茶で、水で薄めて1~2Lにして使用する

 サントリー食品インターナショナルの中核ブランドである「GREEN DA・KA・RA(グリーン ダカラ)」と「伊右衛門」。これらも「サントリー天然水」と同様に、派生商品を投入し、商品ラインアップを拡大。ヒット商品を生み出してきた。この背景には、消費者の潜在的なニーズを探る綿密な調査と天然水と同様に消費者のベネフィットを規定した「関係性」があった。

スポーツドリンクから生まれた「GREEN DA・KA・RA」

 2000年にサントリーが発売した「DAKARA(ダカラ)」はスポーツドリンクブランドである。当時、「カラダ・バランス飲料」というキャッチフレーズを掲げ、小便小僧が輪になり、健康について語り合うテレビCMが放映されていた。記憶している人も少なくないだろう。

2000年に発売のスポーツドリンク「DAKARA」
2000年に発売のスポーツドリンク「DAKARA」

 DAKARAの派生商品として、12年4月に登場したのが「GREEN DA・KA・RA」だ。グレープフルーツやレモンのほか、サトウキビ、トマト、キダチアロエ、海藻、黒ごまなど11種類の素材を含み、日常生活の水分補給に適したすっきりとした甘みに特徴がある。16年には中身を改良し、飲みやすさを高めている。

 GREEN DA・KA・RAの販売は好調だ。直近の19年第1四半期には対前年で20%増加した。中でもブランドの成長をけん引しているのが、13年の発売以来販売数量を伸ばし続けている「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」だ。

 実績を上げているやさしい麦茶だが、GREEN DA・KA・RAのスポーツドリンクという出自を考えると、かけ離れた印象を抱く人も多いのではないか。

 実際、社内でも異論があった。「開発チームが、麦茶を出したいと言い出したときには、『なんで麦茶なんだ』と大論争になった」とサントリー食品インターナショナルの沖中直人・常務執行役員は話す。一方で、「家庭では、暑い時期の飲み物としてはスポーツドリンクと麦茶が定番。特に日本では昔から麦茶を飲む習慣がある。スポーツドリンクと麦茶には代替性があり、GREEN DA・KA・RAブランドで出してもおかしくない」と主張する。

 GREEN DA・KA・RAは、スポーツドリンクであるDAKARAに対して、家庭を中心とした日常での水分補給に焦点を当てている。ブランドの関係性を「親子を笑顔に」「やさしさの循環」と規定している。親子を笑顔にするという観点からすれば、麦茶をラインアップに加えることにも必然性はあるというわけだ。「外部からはブランド戦略として無節操に見えるかもしれないが、そうではない」と沖中氏は話す。

左から「GREEN DA・KA・RA」「すっきりしたトマト」「まぜまぜスムージーフルーツミックス」。GREEN DA・KA・RAは、商品ラインアップの拡大により中核ブランドに成長した
左から「GREEN DA・KA・RA」「すっきりしたトマト」「まぜまぜスムージーフルーツミックス」。GREEN DA・KA・RAは、商品ラインアップの拡大により中核ブランドに成長した

 やさしい麦茶は、家族における麦茶の利用状況の変化に気付いたことが開発のきっかけになっている。開発に際して、同社社員が数十軒の一般家庭を訪問。台所や冷蔵庫をチェックして、麦茶の作り方や保管方法を詳細に調査し、インタビューを重ねて家庭の生の声を集めた。そこで浮かび上がったのが、麦茶でこれまでの主流だった煮出しから水出しへのシフトだった。「煮出しは、麦茶特有の香ばしさがあるが、えぐ味が強くなる。それに対してすっきりとした味で飲みやすい水出しが好まれる傾向がある」と同社ジャパン事業本部ブランド開発事業部課長の高原令奈氏は分析する。

高原令奈氏<br>サントリー食品インターナショナル<br>ジャパン事業本部ブランド開発事業部課長
高原令奈氏
サントリー食品インターナショナル
ジャパン事業本部ブランド開発事業部課長
社員が一般消費者の家庭を訪問し、台所や冷蔵庫の中などを調査。飲料の使用状況を確認した
社員が一般消費者の家庭を訪問し、台所や冷蔵庫の中などを調査。飲料の使用状況を確認した

 こうした課題に対して、13年7月に発売したペットボトル入り麦茶「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」を発売した。アミノ酸、食物繊維を含むほか、えぐ味を和らげて子供でも飲みやすくしたのが特徴。液色も薄くして、味をイメージしやすくしている。

 また保管については、以前からあるティーバッグタイプが軽量で省スペースな点で優位性がある。一方で、煮出しや水出しが必要で、作るのに時間が掛かる。ペットボトルタイプは、注ぐだけで済む一方で、かさばるという問題があった。こうした課題に出した答えが、19年4月に発売した「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶 濃縮タイプ」だった。180gの缶入りの濃縮麦茶で、ユーザーはこれ1本を水で1~2Lに薄めて使用する。作るのにそれほど手間がかからず、ペットボトルに比べれば、大幅に省スペースになる。こうした価値が支持されて、販売数量を伸ばしている。

GREEN DA・KA・RAのCMやイラストでは、親と子供に親しみやすいイメージを訴求している
GREEN DA・KA・RAのCMやイラストでは、親と子供に親しみやすいイメージを訴求している
サントリー食品のブランド戦略のポイント(3)
・社員自らがユーザー調査を実施して消費者のニーズを体感する
・ときには自己否定することも恐れず、現実に対応してブランドの関係性を再定義する

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