アパレル業界で、ECの個人売り上げを「見える化」し、実績に応じたインセンティブをショップ店員に還元する取り組みが広がっている。リアル店舗でもECでも圧倒的な売り上げをたたき出す「オムニチャネル店員」が増殖。その裏には、あるスタートアップの活躍があった――。

バロックジャパンリミテッドが展開するマウジー ルミネ立川店で働く「カリスマ店員」、なとりかさん。ECでも絶大な影響力を持つ
バロックジャパンリミテッドが展開するマウジー ルミネ立川店で働く「カリスマ店員」、なとりかさん。ECでも絶大な影響力を持つ

 リアル店舗とECサイトの融合、すなわちオムニチャネルの実現は、多くの小売企業にとって耳の痛いテーマだろう。というのも、掛け声だけはずっと以前から挙がっているものの、いまだにリアル店舗とECサイトは別々の担当者がそれぞれの販売目標を追って運営する「別事業」で、分断状態にあるからだ。足元で収益の大半を稼ぐのはリアル店舗だから、成長著しいECにすべて移行する決断もできない――。

 そんなジレンマを解消する一手として、アパレル業界で注目を集めているのが、2011年創業のスタートアップ、バニッシュ・スタンダード(東京・港)だ。同社は、リアル店舗のショップ店員が撮影したコーディネート写真に商品情報をひも付け、自社のECサイトやInstagramなどのSNSに同時投稿できるシステム「STAFF START(スタッフスタート)」を提供する。

 ショップ店員は自身が勤務する店舗にいながらにして、ネットを通じて全国の顧客に対して「デジタル接客」ができるようになる。また、EC上の個人販売実績が可視化されるため、それぞれのショップ店員の発奮材料となり、どんなコーディネート写真がコンバージョンにつながりやすいのかも分析可能。導入企業にとっては、リアル店舗とECの垣根を越えてショップ店員の販売力を生かせる仕組みだ。

リアル店舗の商品バーコードをスキャンするだけで、ECサイトで扱う同じ商品をひも付けた投稿ができる
リアル店舗の商品バーコードをスキャンするだけで、ECサイトで扱う同じ商品をひも付けた投稿ができる

 アパレル大手のオンワードホールディングスを筆頭に、19年4月時点でSTAFF STARTの導入ブランドは649を数える。そして、STAFF START経由の年間売り上げ(18年5月~19年4月)は前年同期比で3倍以上、208億円を超える。「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの19年3月期における商品取扱高は3231億円だから、まだ規模は小さいが、その成長性は目を見張るものがある。しかも、導入企業の自社EC販売額のうち、平均43%をSTAFF START経由の売り上げが占めるというから驚きだ。

90年代「カリスマ店員」の再来