子供服やベビー用品を扱うファミリアにとって、店舗は販売よりも体験の場だ。出産前後のファミリーに育児を教えて信頼関係を築いた結果、売り上げは神戸本店で45%増、代官山店は28%増、名古屋店が60%増、横浜元町店が15%増と軒並み上昇。体験した人の約7割が商品を購入するなど効果は大きい。
2018年9月に移転してオープンしたファミリアの神戸本店に入ると、これまでの店舗の常識が覆されるような光景が目に入る。ビルの1~2階部分を占める延べ床面積2131平方メートルのフロアに、広場のような大きな階段スペースのほか、レストランやカフェ、クリニック、リラクゼーションサロンなどもある。さらに、売り場内には、多くのイベントを開催できるスペースが設けられている。沐浴体験や離乳食レッスン、助産師による個別相談会、同じ月齢の親と子供が集まって誕生日を祝い合うパーティー企画など、多岐にわたるイベントを毎日開催。売ることよりも、商品を購入前に試して使ったり、育児を学んだりできる「体験」を重視した店舗なのだ。リニューアル後の神戸本店は順調に売り上げを伸ばし、例えば18年後半に比べて19年前半は約45%増となった。体験した人の約7割が店舗やネットで商品を購入しているという。
例えば、沐浴体験スペースでは3000グラムの赤ちゃん人形を使用。一般的な人形とは異なり、首が据わっていない人形のため、リアルな沐浴体験を味わえる。ベビーバスやタオル、肌着などすべてファミリアで取り扱っている商品を使用するため、ユー ザーは沐浴の手順を学びながら商品の使い心地を試す機会にもなっている。離乳食やおやつを持ち込めば、ファミリアの食器やスプーン、エプロンを使って食べさせることができる。ベビーチェアも何種類か用意されているので、実際に座らせるだけでなく、食べさせたときの子供の様子もチェックできる。
店舗内に併設されたレストランやクリニック、リラクゼーションサロンは、いずれも上質な空間だ。レストランでは有機野菜を中心に旬の素材を使った料理を提供する他、リラクゼーションサロンでは天然由来のエッセンシャルオイルも用意。妊婦もトリートメントを安心して受けられる。
こうしたサービスを充実させる狙いは、ネット販売との差異化にある。ネットで商品を買うことが一般化してきたからこそ、店舗だからこそできるサービスを提供し、 他のブランドとの違いを明確にアピールしようという考えだ。神戸本店の佐竹直子副店長は 「商品を販売することも大切なことだが、それ以上に重視しているのが顧客との絆を深めること。丁寧な接客はもちろん、イベントなどを通じて顧客との信頼関係が生まれると、継続的に来店してくれるようになり、結果として売り上げにつながる」と話す。オープンして約1年だが、これまで40万人が来場したという。
妊娠してから2歳の誕生日を迎える約1000日間が勝負に
赤ん坊が最も成長する時期は「妊娠してから2歳の誕生日を迎えるまでの 約1000日間」といわれる。そこでファミリアは「for the first 1000days」と いうコンセプトを打ち出し、育児をする親と子供をサポートするようにした。これを実現させるため、16年から体験型の店舗を東京・代官山をはじめ、名古屋と横浜・元町に順次出店し、旗艦店の神戸本店でもリニューアルに踏み切った。各店も好調で、いずれもリニューアル後は売り上げが増加。例えば18年に比べて19年は前年同月比で代官山店が28%増、名古屋店が60%増、横浜元町店が15%増となった。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー