2016年度の売上高で、22年ぶりに業界首位から陥落したマツモトキヨシ。だが、19年3月期連結決算では、売上高が2期連続過去最高、営業利益は4期連続過去最高を更新するなど、驚異の成長を遂げている。その原動力がヒットを続々生み出すPB。地方発チェーンの関東進行にどう戦うか、第4回はマツキヨの秘策を探った。
ビビッドなスカイブルーの缶から、水彩絵の具かと思うほどの鮮やかなレッドの液体が流れ出す――。この奇妙な商品の正体は、19年5月にマツモトキヨシが発売した飲料「EXSTRONG BODY&SALT ENERGY DRINK」。同社のPBエナジードリンクの第5弾だ。発売されるや否や、「ついに新作が出た」「早速飲んでみた」など、SNSには多数の書き込みがあふれ、ユーチューバーもお試し動画を投稿。「驚きの連続がコンセプト」(営業統括本部商品企画室商品開発課の櫻井壱典課長)と語るように、缶と液体の色のギャップや味の意外性、炭酸の強い刺激、脅威の栄養成分量などに多くの人が反応している。
「エナジードリンクといえば、気分をリセットしたり、気合を入れたりする際に飲むのが主な想定用途だった。だが、驚きや楽しさといった情緒的価値を提供し、一種のエンタメとして体験するニーズを掘り起こそうと考えた」と、櫻井氏は語る。その狙いは見事に当たり、17年12月に発売された第1弾からのシリーズ累計販売本数は172万を突破。定番かつ主力商品の1つとなった。
薄れた「革新性」。狙いすました“奇抜さ”で復活
オリジナルエナジードリンクは、色や味のインパクトだけを追求した“一芸商品”のように思えるが、実は周到に準備されたPB刷新の成果として生まれた。
振り返って14年ごろ、マツモトキヨシ社内ではある消費者調査の結果が大きな波紋を呼んでいた。それは、同社のイメージとして、「フレンドリー(親しみやすさ)」「コンビニエント(利便性)」という項目が非常に高く評価されていた半面、「イノベーティブ(革新性)」の項目が大きく下がっていたことだ。一見すると、消費者が愛着を持って日常的に使っている証左に思えるが、実はこの「革新性の低下」は同社の死活問題だというのだ。
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