大手ECモール「楽天市場」を運営する楽天の社員は、教育体制や業務で得られる知識、経験を生かしてECのプロになる。その手腕を買われて、他社で活躍する「元楽」が増えているが、活躍の場はECだけではない。ビッグデータを用いた、デジタルマーケティングの現場でも元楽が辣腕を振るっている。

イオンドットコム デジタルマーケティング事業本部 本部長 安岡智史氏。大学卒業後、コンテンツプロバイダを経て2006年に楽天入社。 大手ECモールにおけるWeb解析ツールの導入やグロースハックを推進するチームのマネジメントを経験後、マーケティングセクションにてWeb行動データとCRMデータを統合した分析環境の構築やロイヤルティープログラムの開発に従事。 15年イオングループに転じ、オフラインデータの活用や、デジタルマーケティング全般を担当
イオンドットコム デジタルマーケティング事業本部 本部長 安岡智史氏。大学卒業後、コンテンツプロバイダを経て2006年に楽天入社。 大手ECモールにおけるWeb解析ツールの導入やグロースハックを推進するチームのマネジメントを経験後、マーケティングセクションにてWeb行動データとCRMデータを統合した分析環境の構築やロイヤルティープログラムの開発に従事。 15年イオングループに転じ、オフラインデータの活用や、デジタルマーケティング全般を担当

 楽天市場の運営に携わるのは、コンサルタントだけではない。当たり前だが、楽天自身もより売れるサイト設計を追究し続ける必要がある。楽天でそうした役割を担うのが、ECカンパニー編成部と呼ばれる部門だ。楽天市場のUI(ユーザーインターフェース)の開発、メールマガジンや特集ページの制作などが主務となる。膨大なアクセスデータを解析して、UIやマーケティング施策の改善に日々取り組んでいる。

 大量のアクセスログや購買データが集まる、日本有数のプラットフォームである楽天市場は、データドリブンなマーケティングの知識や経験を身に付ける格好の場だ。イオンドットコムでデジタルマーケティング事業本部長を務める安岡智史氏は、そうしたデータ・ドリブン・マーケティングのノウハウを得るべく、2006年に中途採用で楽天に入社した。「より広範囲の顧客を対象としたネット企業で経験を積みたいと考えた」と安岡氏は振り返る。

 安岡氏が所属を希望したのが、楽天のECカンパニー編成部だった。データに基づき楽天市場を改善していく経験を積める点に、将来的なキャリアパスを描くうえで魅力を感じたという。安岡氏はECカンパニー編成部を中心に、10年間にわたって楽天でデジタルマーケティング業務を担当した。

 楽天に入社した安岡氏はまずデータ解析の基盤の整備に取り組んだ。出店者から募ったさまざまな懸賞を集めた、新規顧客開拓を目的としたサイト「懸賞広場」の解析を安岡氏は任された。ところが、「メールマガジンのクリック数と、PVぐらいしかデータがなかった」(安岡氏)。安岡氏が入社した06年の時点でも、月間のPV数は1億に達するなど、相当な量のデータを楽天は持っていた。にもかかわらず、きちんと解析できる土壌が整っていないのは宝の持ち腐れだと安岡氏は考えた。

 そこで、より詳細にサイトの分析をするために、安岡氏は解析ソフトOmniture(オムニチュア、現Adobe Analytics)の導入を楽天の三木谷浩史社長に直訴した。導入はすぐに決まった。提案した安岡氏は、導入プロジェクトの責任者になった。

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