今、EC業界で活躍が目覚ましい「元楽」。元楽とはECモール「楽天市場」を運営する楽天で経験を積み、他社で活躍するOBを指す。第3回では通販大手ベルーナのEC事業本部で活躍する芹澤貴久氏を紹介する。同社の楽天市場店の売り上げをわずか2年で2倍に増やすなど存分に力を発揮している。
「楽天で学んだことで今も意識しているのは、キーマンを巻き込むこと。メールより電話、電話より直接会いに行って、自分の思いを伝える。将来の夢を数字で語ることが大切」。そう話すのは、楽天OBで現在はベルーナのEC事業本部第1営業部課長代理の芹澤貴久氏だ。
現在、ベルーナの楽天市場店、KDDI系のWowma!(ワウマ)、自社サイトのインテリア用品部門を担当している。特筆すべきはECコンサルタントの経験を生かして、同社の楽天市場での売り上げを、転職からわずか2年で2倍に増やしたことだ。今ではさらに伸びて2012年4月の転職当時の5倍以上の売り上げを誇る。さらに商品説明画像などのABテストの導入を提案。15年8月の導入後に同社のEC部門全体で30%以上の増収効果があったという。
成功事例が人を動かす
芹澤氏は楽天ではECコンサルタントとしてキッチン・日用雑貨品分野を担当していた。ECコンサルタントの役割は楽天市場への出店者たちを指導して、その売り上げを高めることだ。販促策としては、楽天市場内での広告出稿による新規客獲得や既存客に再購入を促すフェアの開催などさまざまな提案が可能だが、結局のところ出店者側のキーマン=責任者が、こちらの提案を受け入れてくれなくては意味がない。
「出店者には中小企業経営者の方が多く人生経験も豊富。そんな方々に30歳前の若造が意見を言ってもなかなか聞いてもらえるものではない。場数を踏むことに加え、意識したのは夢を語って目標を共有すること」(芹澤氏)。例えば、ある出店先に将来の売り上げ目標を提示し、先方の責任者が同意してくれたときに目標は2人の間で「共有」される。そうなって初めて、ECコンサルタントの提案が出店者側の心に響くことになる。
もちろん相手の信頼を得るのは簡単なことではない。そこで大切になるのが、他社の成功事例だ。「人、モノ、カネが限られる中で何に注力すべきか考えるときに、成功事例は最も説得力がある」(芹澤氏)。
楽天はノウハウを吸収することに貪欲な組織だ。例えば、芹澤氏はダイエーから楽天に転職しているが、小売りでの経験は転職先の楽天でも生きた。「小売業界では、1年間を52週に分けて販促策を考える販売計画書の作成は基本です。しかし、ECの世界ではほとんど知られていなかった」(芹澤氏)。当時のECは、メーカーや卸からの参入者が多く小売り経験者が少なかったためだ。この52週の販売計画書作成ノウハウは楽天のECコンサルタントたちに共有され、芹澤氏は07年11月に社長賞に相当する「楽天賞」を受賞している。
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