個性的なネーミングを武器にブランド力を向上させ、売り上げ増を実現する──そんな手法を事例を基に考える特集の第2回。資生堂のコスメブランド「マジョリカ マジョルカ」の商品名は、魔法の呪文のような独特なもの。若い女性のセンスにフィットするネーミングは、どのように決まるのか。
資生堂の「マジョリカ マジョルカ」(以下、マジョマジョ)は、2003年から続くロングセラーのコスメブランド。ファンデーションからアイシャドー、チーク、リップ、ネイルなど幅広い商品を展開している。それぞれの商品に多様なカラーバリエーションがあるが、その色の名前が風変わりなものばかりだ。
例えば、リップ「ピュア・ピュア・キッス NEO」は現在全14色で、各カラーの名前は「主役」「密告」「令嬢」「ちやほや」など。アイシャドー「オープンユアアイズ」は全5種で、カラーの名前は「目くばせ」「最短距離」「おとなり」「最長記録」「急展開」。名前を見ただけではどんな色なのかさっぱり分からない。どうしてこのようなネーミングなのだろうか。
“かわいい”を見つける旅の魔法道具
「マジョマジョのコアターゲットは16歳から24歳。1アイテムの価格が数百円から、高くても2000円以下で、若い人でも買いやすい価格設定にしている」
マジョマジョのブランドマネージャー、梶浦砂織氏はこう説明する。ターゲット層の心をつかむブランドコンセプトは「“かわいい”の扉をひらく」。アイテムを手にするたびに新しい“かわいい”に出合える──そんな「魔法の道具感、魔術的な語り口」(梶浦マネージャー)でブランドイメージを構築している。
ブランドストーリーでは、かわいくなりたい女の子が美しい伝説の鳥マジョリカバードに出合い、“かわいい”の扉を開き続ける旅が始まるという、西洋のおとぎ話のような物語を展開する。「マジョマジョはかわいい私を見つけていく行程を、旅をモチーフに表現している」(梶浦マネージャー)。そもそも「マジョリカ マジョルカ」というブランド名自体、「女の子をかわいくする魔法の呪文」という設定なのだ。
では、具体的に名前を生み出すプロセスを見ていこう。アイシャドー「シャドーカスタマイズ」に19年8月、3つの新色が加わる。「マサラチャイ」「シナモン」「胡桃」の3色だ。下の画像は、クリエイティブ本部アソシエイトクリエイティブディレクターでコピーライターでもある田中翔子氏のアイデアノートの1ページである。
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