ネーミングを軸にブランド力を向上させ、売り上げ増を実現する──そんな手法を事例を基に考える特集の第1回。“おじさんの酒の肴”のイメージをガラリと変え、渋谷のヒカリエで大ヒットを飛ばす珍味専門店「ホタルノヒカリ」。珍味の常識を覆す摩訶不思議なネーミングが女性客を魅了した。

東京・虎ノ門の珍味専門店「ホタルノヒカリ」
東京・虎ノ門の珍味専門店「ホタルノヒカリ」

 東京・虎ノ門にある珍味専門店「ホタルノヒカリ」。床面積わずか7坪の店内には、風変わりでしゃれの効いたネーミングの珍味がズラリと並んでいる。

 例えば、店名と同じ「No.0 ホタルノヒカリ(ホタルイカの丸干し)」や、「No.7 午前0時のシンデレラ(焙り焼きした干しエイヒレ)」、「No.15 魅惑のRouge(ツブ貝の燻製)」、「No.91 ポセイドンの怒(カツオのジャーキー)」などなど。

 同店を経営するのは、食品販売のSORA(東京・港)の中川雅喜社長だ。中川氏は珍味を扱う中堅食品会社に16年ほど勤めた後、2013年に独立。自ら小さな食品卸会社を設立し、15年から小売りも始めた。

 食品会社勤務時代に全国の珍味メーカーを営業で訪ね歩いた中川氏は、独立した理由をこう語る。「日本各地に珍味の名品を作る中小メーカーがたくさんあるが、販路を広げられず毎年2~3軒ずつ潰れている。せっかくおいしい珍味を作っているのにもったいない。それなら自分がマーケットを作って業界を変えてやろうと考えた」。

 珍味は“年配の男性の酒の肴”というイメージが強い。しかし、中川氏は、「珍味のおいしさを若い男女にも、世界の人々にも伝えたい」と言う。中川氏は現在41歳。珍味メーカーの2代目、3代目には同年代が多く、珍味を求めて訪れた際に酒を酌み交わし、珍味への思いや、珍味専門の小売りを始めようと思っていることなどを熱く語ると、協力するメーカーが何社も現れた。

●「ホタルノヒカリ」人気商品ベスト10(10~8位)

10位「No.93 小悪魔の悪戯」560円(税込み、以下同)
丸ごとボイルしてから素干しにした無添加の石川県産甘エビの丸干し

<ネーミングの由来>エビの殻やヒゲ、足が、食べた口の中で「チクッ」と刺激するおいしい小悪魔の悪戯

9位「No.08 秋の落し物」940円
魚介類と相性のいい桜チップでいぶした北海道産秋鮭の燻製

<ネーミングの由来>秋鮭の旨みをそのまま閉じ込めた恵みの秋がもたらす落とし物を頂きたい!

8位「No. 70 stardust」580円
職人が一窯ずつ手揚げしてスリ胡麻で和えた秋田・八郎潟産のワカサギ

<ネーミングの由来>ワカサギが水から上がる姿は星屑のようにキラキラ。星屑に願いを込めて!

珍味に縁遠い女性にウケるネーミング

 だが独立してしばらくは鳴かず飛ばず。そんなある日、取引先と待ち合わせをした席に、取引先の知り合いの渋谷ヒカリエのマネジャーがひょっこり顔を出した。中川氏がそのマネジャーに、おしゃれな珍味を売りたいという計画を話すと、ヒカリエの催事イベントへ出店しないかと誘われた。

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