インテージ社長に2019年4月に就いた檜垣歩氏。初のインタビューである。調査モニターのリサーチ会社からAI活用へかじを切る。そう話を向けると「データ、データってそれは会社の一側面。リサーチの本質は人間理解ですからね」と戒めの言葉。特集「データ売買 最前線」第1回と併せてお読みいただきたい。

社長就任以来、初めてのインタビューを受ける檜垣歩社長。華やかさと厳しさを感じさせる
社長就任以来、初めてのインタビューを受ける檜垣歩社長。華やかさと厳しさを感じさせる
檜垣 歩(ひがき・あゆみ)氏
1995年に社会調査研究所(現インテージホールディングス)入社。2015年上席執行役員、16年インテージ取締役。19年4月にインテージ社長に就任

会社の屋台骨の1つであるサービス「全国小売店パネル調査」(SRI)の15年ぶり大幅刷新や、積極的なAI(人工知能)の活用など、地道な印象すらあるインテージがその姿を大きく変えようとしている。

会社が大きな変革期にあることはその通りです。ただそれは、(前任の)石塚(純晃・現インテージホールディングス社長)路線でもある。そんなにね、社長が代わったからといっていきなり会社が変わるわけではありません。ウチは伝統的に現場が事業を動かしていくんです。

変革を急ぐ背景には何がある。

メーカーや流通などのマーケターを巡る環境が様変わりしている事情がありますね。インテージは顧客への“伴走”を是としてきました。だから必然的に当社も変わっていく。イメージとしては経営の中で、ストーリーを重視した戦略が半分、アジリティーつまり柔軟で機敏な対応(戦略)が半分です。

リサーチ業界も大きく変わってきているのではないか。

インテージ、あるいはリサーチ業界が向かうべき道はいくつもあり得ます。正解は1つじゃないのかもしれない。顧客の期待が、リサーチの枠を超えてデータ活用に大きくシフトしている。だからインテージも、リサーチ(サンプリング調査)から全数データ活用へ一気に動いている。調査データ単体の提供からデータ・ドリブン・マーケティング(データドリブン経営)の支援へ大きくかじを切っているのです。そして顧客企業がマーケティングのPDCAを回す際の伴走者になるのです。

インテージのこれまでの資産は生かせるのか。

歴史的に、商品や商店のプロファイリングデータに専念してきたし、強みでもある。商品マスターや店舗マスターのデータのことです。これがあるからこそ、マーケティング文脈でのデータ活用を顧客へ提示しやすい。こうしたデータにはウチの知識とノウハウがギュッと詰まっています。一朝一夕には作られない。だから競争優位を維持できるのです。

データのチカラ、ヒトのチカラ

全国小売店パネル調査(SRI)では、パネルの3994店舗が全国10万店舗の精緻な縮図であることが生命線。2020年1月にはSRI+に衣替えして、部分的に全数データを乗せていく。パネルのデータと全数データは水と油の関係ではないのか。

顧客ニーズがあるのは分かってる訳だし。カセット方式のような形で取り入れられる。私からすれば当たり前のことをやるまでなんです。全数データを取り入れながら、精緻な全体推計を顧客に提示する。この全体推計という“ものさし”が、顧客企業のディシジョンには極めて重要なものなのです。

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