社内の反対意見を説得しようと思わない

 こうした山形氏の斬新な考え方は、長いものづくりの歴史を持つキリンビール社内で、戸惑いを呼んだことだろう。例えば本麒麟は、真っ赤なパッケージに、同社の象徴である聖獣をあしらった。社内でも、これまでとあまりにも違う案には反対の声が出たという。それをどう説得したのかを尋ねると、山形氏は笑った。

 「説得しません。売る前に、心を一つにまとめるのは不可能です。僕の知る限り、売れるものは事前に反対意見が出なかったことがありません。300%の努力で、これしか答えはないと確信できるまで突き詰めて、腹をくくる。それができた人の意見だけを聞きます」

 山形氏が腹をくくるとき、「お客様の24時間を想像し、商品を手に取って買う絵が浮かぶ」という。浮かばないときはスーパーの飲料売り場に何時間でも立ち、観察する。「売り場の前は寒いので厚着したいが、夏場は怪しまれます(笑)」。

 令和時代にはどんなヒット商品を作るのかと尋ねたら「分かっていても絶対に言いたくない」と笑いながら、こう言った。「パーソナルなものが求められるというトレンドは、間違いなくある。ものづくりを変えるチャンスが来ます」。

ヒットをつくる人の素顔
Q:仕事の情報源は?

A:自宅にいるときは、テレビで民放の番組をつけっぱなしにしている。今どんなことがはやっているかが入ってくる

Q:座右の銘は?

A:エリック・リースの『リーン・スタートアップ』。大企業でも持ちたい考え方がある

(写真/タナカヨシトモ)