※日経トレンディ 2019年6月号の記事を再構成

スマホ単体でゲームの実況動画を生配信できるアプリ「Mirrative(ミラティブ)」。その手軽さでゲーム実況の敷居を一気に下げ、広く普及させたのがミラティブ社長の赤川隼一氏だ。ヒットの裏側には、「ショートカット」によって大きなニーズをつかむ同氏の戦略があった。

ミラティブ社長
赤川隼一

1983年生まれ。慶應義塾大学卒業後、2006年にDeNA入社。広告営業やマーケティングに携わった後、「Yahoo!モバゲー」や韓国支社DeNA Seoulを立ち上げ。新卒入社組初の執行役員として、海外事業の統括やゲーム開発に従事。18年2月、ミラティブ(当時エモモ)を創業して社長に就任し現職

『明らかにあるニーズをつかみ、より簡単な方法を示す
価値は同じでも、体験が違えばヒットは生まれる』

 スマホ1つで、誰もが自分のゲームのプレイ画面を、実況しながらリアルタイムで大勢に配信できる。ニッチだった「ゲーム実況」という新たなエンターテインメントを広く普及させたのが、2015年にリリースされたアプリ「Mirrativ(ミラティブ)」。同アプリを通じたゲーム実況動画の配信者は100万人を超え、19年2月には35億円超の資金調達を発表した。

 Mirrativは、赤川隼一氏がDeNA在籍時に新規事業として開発。赤川氏は28歳でDeNAの最年少執行役員を務めた。18年2月には事業を独立させる大きな決断を下し、新会社ミラティブ(当時エモモ)を立ち上げ。自ら代表取締役に就任した。

 Mirrativの提供を開始した当時、すでにPCでのゲーム実況動画の配信は人気だった。だが、実況動画を配信するためには専用の機材が必要だったり、ソフトで編集してからYouTubeなどの動画サイトに投稿する必要があったりと、とにかく手間がかかった。赤川氏は、「スマホゲームを配信するのにPCを通すのは面倒。配信自体、とにかくハードルが高くて、挫折している人もたくさんいた」と目を付けていた。

 新事業を模索する中で、スマホ単体でゲーム画面を多くの人と共有できる技術を発見。ゲームのプレイ画面を実況しながら、多数の視聴者に生配信できる国内初となるアプリの提供にこぎ着けた。

 「スマホだけで、しかも操作は2タップという手軽さで、誰もがゲームの実況動画を配信できる。この手法を見付けた瞬間にヒットを確信した」

 さらに18年、ヒットを一段と加速させたのがアバター機能「エモモ」だ。自分の声に応じてアバターの口や表情が動き、配信もできる体験を世界で初めてスマホ1台だけで可能にした。「素顔をさらけ出すのは嫌だけど、自分のプレイや実況を多くの人に見てもらいたい」というユーザーのニーズをつかんだ。さまざまな機能を備えるスマホの特徴を生かし、配信から視聴、アバター機能まで、Mirrativならオールインワンで完結する手軽さも売りに、配信者を10倍超に激増させた。

「Mirrativ」のアプリ画面。2018年から提供するアバター機能「エモモ」を使うと、VTuberのように生配信ができる。提供開始後、配信者が急増した
「Mirrativ」のアプリ画面。2018年から提供するアバター機能「エモモ」を使うと、VTuberのように生配信ができる。提供開始後、配信者が急増した

 時代の追い風もヒットを後押しした。例えば、"ゲーム実況映え"するコンテンツのヒット。「フォートナイト」や「荒野行動」など、大人数で生き残りを懸けて戦う「バトルロイヤルゲーム」のヒットを、赤川氏は「若者の間で、実況映えするかどうかで遊ぶゲームを選ぶという現象が起こった」と分析する。

Mirrativでの配信が多い、Supercellのゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」のプレイ画面。2018年、Supercell支援の下、ミラティブがパブリックビューイングイベントを開催した
Mirrativでの配信が多い、Supercellのゲーム「クラッシュ・ロワイヤル」のプレイ画面。2018年、Supercell支援の下、ミラティブがパブリックビューイングイベントを開催した

 「TikTok」が流行したように、特に若いユーザーの間では、「承認欲求を満たしたい」という気持ちをさらけ出すことへの抵抗感も減った。「ゲーム中の様子を配信で共有することが、よりカジュアルになった」(赤川氏)。

自分がLINEを作るチャンスもあった悔しさをバネに

 あえて言うなら、Mirrativは革命的な技術やサービスで、新市場を創出したわけではない。そんなアプリをヒットさせた赤川氏の戦略を語る上で、重要なキーワードとなるのが「ショートカット」だ。

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