※日経トレンディ 2019年6月号の記事を再構成
4館体制に生まれ変わった日本橋高島屋S.C.。2018年9月に誕生した新館は、グルメフロアを早朝から開けるという「早開け」で、商業施設の常識を破った。仕掛けたのは、高島屋の子会社で事業部長を務める清瀨和美氏。施設の顔に人気ベーカリーを迎え、客層をも若返らせてみせた。
清瀨和美
1986年、横浜高島屋(現・高島屋横浜店)入社。93年東神開発入社。玉川高島屋S・Cで、SC企画グループ長、営業企画部MDグループ長などを経て、2016年から日本橋開発室長を兼任。18年から現職
『足りないという街の声が、施設の顔をつくる
1人で考えるより、感受性を大事にしたい』
東京都心の朝を劇的に変えた商業施設がある。18年9月に開業した日本橋高島屋S.C.の新館だ。重要文化財である百貨店の本館横に、115の専門店を集めて誕生。低層階のグルメフロアを、平日午前7時半から開けたことで、日本橋の景色ががらりと変わった。
この「早開け」を仕掛けたのが、東神開発日本橋事業部長の清瀨和美氏。「開けちゃう?」。同僚と2人で相談し、いともあっさりと決めた。ヒントになったのは、5年ほど前、米サンフランシスコで見たフェリービルディングマーケットプレイス。朝早くから多くの店が開き、地域に根付いていると感じた。これを日本橋でやれば、出勤前の“通り道”になるという確信を抱いたのだ。
実際に何度も朝の日本橋に足を運んだ。朝食難民がコンビニへと流れていく。出てきた人の袋を見ると、朝食と昼食、両方買い込んでいるほどの大きさだった。「足元にマーケットはある。いつから店を開けるか。朝8時だとちょっと遅い。7時半なら余裕を持って立ち寄れる」と時間を読んだ。
バブルを乗り越えた柏での経験
東神開発は高島屋の子会社である。にもかかわらず、日本橋という、高島屋でも特別な場所の再開発を託された。普通に考えれば異例だが、清瀨氏には大仕事を任されるだけの実績があった。
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