※日経トレンディ 2019年6月号の記事を再構成

競合ひしめくドラッグストアのヘアケア分野で、シェア3位に急浮上した「BOTANIST」シリーズ。大ヒットの裏には、精度と速さを追求したアジャイル型の商品開発や、インスタグラムを中心としたSNSマーケティングがあった。次は、個人のニーズに合わせた“パーソナライズ”に照準を定める。

I-ne代表
大西洋平

1982年、兵庫県生まれ。大学在学中の22歳のときに創業、24歳のときにI-neを法人設立。現在、社員約300人、売上高200億円超の企業へと成長させた。ウェブを中心とするマーケティング戦略が奏功し、「BOTANIST」シリーズで大ヒットを飛ばした。他にも「SALONIA」など複数のブランドを擁する

『スピード感あるアジャイル型のものづくり
個人に寄り添うパーソナライズが次の主戦場』

 無名ブランドだった「BOTANIST」が、2015年の発売からシリーズ累計5000万本を記録。大手ひしめくヘアケア市場で、業界第3位のシェアを獲得する大ヒットとなった。「ボタニカル」という独自の世界観を武器に、SNSを中心としたウェブマーケティングでファンを獲得している。

 ブランドを展開するI-ne(アイエヌイー)代表の大西洋平氏によると、ヒットを生む最大の強みとなったのは、「“精度”と“速さ”にこだわる企画開発力」。12年前の創業期から、同社には「部門を問わず全社員が月1つ以上のアイデアを提案する」というカルチャーが根付いているのだという。さらに、常時リサーチに携わる十数人が、世界中のトレンドワードを分析。「全社員が企画発案に関わり、多数のアイデアから選別するから、全体のレベルが上がる。また、発案から販売までのプロセスを細かく分け、各段階でのPDCAを回し、商品が世に出るまでの修正を繰り返す。メーカーには珍しいアジャイル型の商品開発を実践している」。

 大手メーカーでは通常2、3年かかると言われる商品開発を、同社では最短8カ月ほどで進める。「ニーズの変化スピードが速い時代だからこそ、できるだけ迅速に商品化し、反応を見ながら、よりニーズに合った商品開発につながるサイクルをつくることが重要」。

 その代表例こそ、BOTANISTシリーズだ。企画段階の13、14年ごろ、ドラッグストアの店頭をリサーチした大西氏は「派手な容器のシャンプーが多過ぎる」と違和感を抱き、白地に文字を配しただけのシンプルなパッケージデザインを採用。“インスタ映え”すると受け入れられた。ユニセックスでインテリアになじみやすいデザインは、ナチュラル志向の若い世代やファミリー層も獲得。蓋を開けてみればユーザーの2割は男性だという。

「BOTANIST」はどの商品も、文字だけを配したごくシンプルなパッケージ。植物をイメージさせるビジュアルで統一している
「BOTANIST」はどの商品も、文字だけを配したごくシンプルなパッケージ。植物をイメージさせるビジュアルで統一している

 「マス広告を打つコストはかけられなかった」と言い、SNSでのマーケティングに特化した。広告にモデルを起用せず、「人間は出さない」ことを徹底したのは、「植物と共に生きるライフスタイル」を強く印象付けるため。特定の人物のイメージに固定されることなく、誰もが共感しやすい入り口を演出する。「世界観を伝える」という目的をブラさなかったことで、固定ファンの獲得や好意的な口コミを広げた。

旗艦店の併設カフェで世界観を体現

 17年には原宿にコンセプトカフェもオープンするなど、リアルな体験でも世界観を伝えるタッチポイントを増やしている。「環境保全の取り組みなど、社会に対する企業姿勢に敏感な消費者が増えている。ヘアケアの機能性だけでなく、『どういうライフスタイルに寄り添うか』というメッセージに合うクリエーティブ(ビジュアル)を発信し続けた」。

東京・原宿に、フラッグシップショップの「BOTANIST Tokyo」をオープンし、そこにBOTANISTのイメージを体現するカフェを併設。果物や野菜をふんだんに使った料理・飲み物を提供。
東京・原宿に、フラッグシップショップの「BOTANIST Tokyo」をオープンし、そこにBOTANISTのイメージを体現するカフェを併設。果物や野菜をふんだんに使った料理・飲み物を提供。
パワー サラダプレート 1300円(税込み)
パワー サラダプレート 1300円(税込み)