※日経トレンディ 2019年6月号の記事を再構成

今、最も旬なCMディレクターだ。「さけるグミ」「カレーメシ」「ブックオフ」……数多くのヒットCMを手掛け、国内外の賞を獲得している佐藤渉氏。ぶっ飛んだCMからは一軒創造がつかないが、その裏には「商品から逃げない姿勢」があった。CMづくりの秘訣を聞いた。

TYO SPARK ディレクター/プランナー
佐藤 渉

1980年生まれ、宮城県出身。東海大学卒業後、専門学校を経て、2006年にモンスターフィルムス入社。現在はTYOのクリエーティブ部門「SPARK」に所属。今年は、リリー・フランキーを起用したUHA味覚糖「さけるグミ」の新シリーズや、田中圭や清原果耶が出演するソフトバンクCMなども担当。受賞歴多数

『「商品を見せないといけない」という
縛りを逆手に取って、笑いを生み出す
制約があるからこそ面白いものが作れる』

 平成の時代、CMはテレビだけでなくネット上でも見られるようになった。これにより、テレビは短期集中で流し、後はウェブで拡散を狙うというパターンのCMが増えている。UHA味覚糖の「さけるグミ VS なが~いさけるグミ」のシリーズもそうだ。

UHA味覚糖「なが~いさけるグミ」
UHA味覚糖「なが~いさけるグミ」
春の公園で、若いカップルがデート中。彼が彼女に「さけるグミ」を渡そうと割いていると、彼女がほほ笑む。「トオルさんが、さけるグミを割いているときの顔が好き。もっと長~く、見てたいな」。次の瞬間、視界に入ったのは、スーツ姿で「なが~いさけるグミ」を割いているダンディーな小澤征悦。本当はなが~いのが好きな彼女は、2人の男の間で心を揺らす日々を送る……

 こうして始まった30秒×11話の不条理劇場は、日本最高峰の広告賞「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2018」の総務大臣賞/ACCグランプリと、「TCC賞」の二冠を獲得。またインターネットを通じて海外でも人気となり、英語や中国語などに翻訳されて世界的な拡散ぶりを見せた。そしてついには世界最高峰の広告祭「カンヌライオンズ」のフィルム部門でシルバーを受賞する快挙を果たしている。

2月に公開になった、「さけるグミ」CM新シリーズにも佐藤氏が参画。リリー・フランキーが怪しい“さけるグミおじさん”に扮し、屋台でさけるグミを売る。19年のバレンタインが仏滅だったことにひっかけた苦笑いを誘う話など、全7話で展開

 このCMを演出(監督)したのが、CMディレクターの佐藤渉氏だ。佐藤氏は1980年生まれ。2006年に「モンスターフィルムス」に入社し、現在はTYOのクリエーティブ部門「SPARK」に籍を置く。

スパイク・ジョーンズで開眼

 佐藤氏がテレビCMの世界に入ったきっかけは、大学時代のオールナイトイベント「世界のCMフェスティバル」で数多くの海外CMを見て衝撃を受けたこと。特に好きだったがIKEAの「Lamp」というCM。ビョークなどのミュージックビデオで知られたスパイク・ジョーンズが手掛けた名作だ。

 「エモーショナルに引っ張って、最後にブラックに落とす。こういうものを日本でもやりたいと思って、決まっていた内定を断って、映像の専門学校に入りました。最初はディレクターが何をする人か分からなかったし、企画するCMプランナーになりたかった」

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