※日経トレンディ 2019年7月号の記事を再構成
USJのV字回復の立役者で、現在は企業成長会社「刀」を率いる森岡毅氏。長女の就職活動の手助けのために書きつづった「働くことの本質」をまとめた書籍がヒットしている。日本人は「合理的に準備して、精神的に戦う」べき。希代のマーケターに、日本を元気にするための「提言」を日経トレンディ編集長が聞いた。
新刊『苦しかったときの話をしようか』は、ご長女の就活に当たって、働くことの本質を説かれた本です。実際、ここで書かれたように、資本家になることを勧められたのですか?
森岡 毅氏(以下、森岡) 勧めました。ただ、どのような道を選ぶかは、本人の考え次第です。私は伝えたいことを伝えたまでで、これ以上は干渉しないつもりです。
ご長女が入っていくビジネスの世界や労働環境も刻々と変化しています。昨今の「働き方改革」については、どのようにお考えですか?
森岡 政府が法律を変えて労働環境を向上させようという姿勢については肯定的に捉えています。ただ「働き方」を時間や場所を基準に判断している時点で、旧来の思考法ですよね。残業時間やワークライフバランスなどは、昭和の改革です。つまり労働時間を誰かに管理されなければいけない人が多いことが間違っている。この状態を変えてこそ、真の働き方改革です。
変えるべきは、労働時間でなく、労働の質ということでしょうか。
森岡 その通りです。大切なのは、「今まで5時間かかっていた仕事を、3時間でできるようにすること」です。そのためには個々が能力を伸ばす必要もあるでしょう。その結果、2時間の余裕が生まれれば、新たな仕事に取り組めますし、スキルアップに必要な学習などに時間を使えます。こうした体制を支援する仕組みづくりが、働き方改革のあるべき姿と考えます。私は、日本と米国それぞれで働いてきましたが、日本のホワイトカラーの生産性は米国と比べて悪過ぎます。まずはそこからメスを入れるべきでしょうね。
日本人の生産性の低さは、どこに起因するのでしょうか?
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