※日経トレンディ 2019年7月号の記事を再構成
熱狂的なファンがスタジアムを真っ赤に染める──。浦和レッズを象徴するのが、分厚いファン層。入場者数は13年連続で1位を記録し、本連載のビジネスマネジメント力ランキングでも1位に輝いた。そんなレッズが新規ファンの獲得を含め、集客力アップの策として打ち出したのが“二兎を追う”席割改革だ。「怖いファン」を逆手に取った戦略とは。

平均入場者数:3万3542人
集客率:52.7%
売上高:79億7100万円
スポンサー数:約90社
SNSフォロワー数/
Twitter:約40万1500人
Facebook:約6万8500人
Instagram:約79万1000人
地鳴りのような声援と、反り立つ巨大な“赤い壁”。浦和レッズの本拠地は、Jリーグで2番目に大きい埼玉スタジアム2002だ。ここを熱狂的なファンが真っ赤に染める光景は、リーグを代表する名物の一つといえる。
Jリーグ初年度である1993年の戦績は、最下位。99年には15位で降格したが、1年でJ1に復帰すると、2006年にリーグを初制覇。翌07年にはJリーグのクラブとして初のACL(AFCチャンピオンズリーグ。アジアのクラブ1位を争う国際大会)優勝も果たした。最近はリーグ優勝から遠ざかってこそいるが、18年は5位とまずまずの成績。年末には天皇杯のタイトルを獲得し、存在感を示した。槙野智章ら日本代表経験者、実績豊富な選手も毎年のように獲得。名実共にビッグクラブの地位を確立している。
売上高リーグ1位のクラブらしく、選手は各チームで実績を残してきた顔触れがそろう。18年のロシアW杯日本代表に選出された槙野智章ら、代表経験者も多い。今季はJリーグ、ACLともやや苦戦しているが、レギュラークラスが控えに回る分厚い選手層は強豪の名に恥じない。
そして何より浦和レッズを象徴するのが、分厚いファン層だ。J2での戦いから僅か7年でアジアの頂点に輝いた成功物語がファンを魅了し、08年には平均入場者数4万7609人という驚異の数字をたたき出した。ファンに支えられた経営基盤は今なお強固で、18年度の売上高は約75億円。18年の平均入場者数は3万5502人で、06年から13年連続で1位を記録している。Jリーグ最多を記録した17年の入場料収入は、J1平均の3倍超という23億3700万円に上った。
連載1回目の記事(「Jリーグ55クラブのビジネス力をランキング 2位は鹿島、1位は?」)で紹介したビジネスマネジメント力ランキングでも、平均入場者数や客単価の指標がトップ。本拠地が大き過ぎるため、スタジアム集客率こそ目立ってはいないが、圧倒的な集客力で総合1位になった。
しかし課題はある。前述のように平均入場者数はピーク時より減少しており、Jリーグの調査では、18年の新規ファンの参入率は最下位だった。熱心なファン層によるハードな応援スタイルは、観戦初心者にとっては「怖そう」と心理的なハードルになる。浦和の経営を支える強みが、新規ファン獲得戦略にとっては弱点になっていた。
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