2019年10月に携帯電話事業へ新規参入する楽天。通信事業者ではNTTドコモをはじめ大手3社が地盤を固めている。5G時代を迎える中、楽天は、自ら携帯電話のネットワークを持つことで何を狙うのか。勝算はあるのか。会長兼社長の三木谷浩史氏は「民主化」「仮想化」という2つのキーワードを掲げる。

「Rakuten Optimism 2019」の基調講演に登壇する楽天会長兼社長の三木谷浩史氏氏
「Rakuten Optimism 2019」の基調講演に登壇する楽天会長兼社長の三木谷浩史氏氏

 10月には携帯子会社である楽天モバイルが、携帯電話サービスを開始する。他社からネットワークを借りてサービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)の立場から脱却し、自らモバイル通信のインフラを持つ。

 とはいえ、具体的なサービスや方向性はまだ明らかにされている訳ではない。創業者としての強いリーダーシップで携帯事業参入を推進してきた三木谷氏は、5G時代を見据え、携帯電話事業で何を目指そうとしているのか。

 楽天は19年7月31日から4日間かけて大規模イベント「Rakuten Optimism 2019」を開催した。掲げたテーマは「5G時代を、先取りしよう」。その意味を確かめようと、初日の三木谷氏による基調講演には多くの来場者が耳を傾けた。

三木谷氏が目指す民主化

 楽天の創業は1997年。当時、家庭からインターネットへ接続する通信速度は28.8kbpsであった。5Gでは、およそ100万倍となる20Gbpsの通信速度が可能となるとされている。しかも、手のひらのスマートフォンで利用できるようになる。三木谷氏は創業当時、そうした状況が訪れるとは「予測できなかった」と話し、5Gによって社会構造が抜本的に大きく変化すると考えていると説明した。そうした中、携帯電話事業に参入することで実現したいことは「モバイルネットワークの民主化」だと三木谷氏は話す。

 インドでは、2016年に参入した携帯電話事業者「リライアンス・ジオ・インフォコム」が、2Gが中心だったインドの携帯電話市場に、4Gの高速なネットワークを月額で約3米ドル(約320円)で提供した。約2年間のうちに3億5千万もの加入者を集めたという。その事例を引用しつつ、「日本ではヘビーユーザーであれば毎月1万円ほどを払っている。サービスの進化がない中で、楽天グループが殴り込みをかける」(三木谷氏)と話す。携帯大手3社がほぼ同質で同じ料金のサービスを提供し続けている。そんな中、日本でもより低価格で高品質なネットワークを提供することが、楽天の目指す「民主化」と位置付けた。

楽天モバイルの切り札「ネットワーク仮想化」

 そのための武器となるのが「ネットワーク仮想化」だと三木谷氏は話す。従来、携帯電話網を構成する基地局、交換機などには携帯電話向けに特化した専用機器が用いられてきた。それらの機器の機能を、クラウドコンピューティングなどで一般的に使われている汎用サーバーと、その上で動作するソフトウエアで実現するのがネットワーク仮想化という技術になる。

楽天はネットワーク機器の機能を汎用のサーバーとソフトウエアで実現する「ネットワーク仮想化」を導入することで低コスト化を実現する
楽天はネットワーク機器の機能を汎用のサーバーとソフトウエアで実現する「ネットワーク仮想化」を導入することで低コスト化を実現する

 ネットワーク仮想化のメリットの1つは、汎用の機器を用いることから導入コストが安いうえ、メンテナンスにかかる費用も大幅に抑えられること。そしてもう1つは、ソフトウエアを変えるだけで新しいネットワークやサービスに対応できるなど、柔軟性の高いネットワークを構築できることにある。