5GやIoTの技術で様々な企業を支援するサービスを作り出し、そこから発生したデータを集約してマーケット化。販売の収益はデータの持ち主である企業とシェアする。「データは大量にあるが利益につながらない」。KDDIは、そんな企業が抱える課題にも対応する5G時代の事業モデルを描く。

日経クロストレンドFORUM 2019で講演したKDDIビジネスIoT推進本部ビジネスIoT企画部長の原田圭悟氏(写真/中村宏)
日経クロストレンドFORUM 2019で講演したKDDIビジネスIoT推進本部ビジネスIoT企画部長の原田圭悟氏(写真/中村宏)

 高速・低遅延・多接続の5Gが登場すれば、企業のIoT活用はますます進む。製造、流通、販売などさまざまな業種で業務改善や人手不足の解消に役立つ可能性は高い。その一方で、データの量も膨大になっていく。

 単にコスト削減を進めるだけでなく、企業が抱える「データは取れたが、どう収益につなげるか」という課題の解決策を示したのは、KDDIビジネスIoT推進本部ビジネスIoT企画部長の原田圭悟氏だ。2019年7月24日に始まった「日経クロストレンドFORUM 2019」で講演した。

KDDIは、IoTのデータを集約するデータ販売サービス「IoTクラウド Data Market」を提供している
KDDIは、IoTのデータを集約するデータ販売サービス「IoTクラウド Data Market」を提供している

 KDDIが扱う5Gの通信機能、クラウド基盤、2000種類ものIoTセンサーなどを生かし、多彩な企業に向けてKDDIがソリューションを提供。そこで集まったビッグデータを多面的に活用し、他の企業や自治体などに販売する。例えば、ある会社が、地盤の強さを測定するセンサーを使い、各地でデータを集めたとする。そうしたデータは「地盤の強い場所を探している住宅会社や、防災に生かしたい自治体に販売できる可能性がある」(原田氏)。得られた収益は、測定をした会社とKDDIとでシェアする。

 データを集約し販売するためのKDDIのサービス「IoTクラウド Data Market」は17年に開始。「顧客のデータが売れそうなときに声をかけることもあるし、逆に売りたいと話をいただくこともある」と、5G時代に向けた事業の広がりに原田氏は期待をかけている。

低遅延が世の中を変える

 5Gの用途については高速大容量、低遅延、多接続という3つの特徴ごとに、KDDIの取り組みを紹介した。

 高速大容量の例は、沖縄の球場でカメラをバッターボックスに向けて16台設置し、スマートフォンやタブレットで自由視点の動画をリアルタイムで見られる実験を紹介した。リアルタイムで各カメラからの動画をサーバーに配信し、5Gの基地局から球場の客席に動画データを送る。

プロ野球の試合を16台のカメラでとらえ、球場内の5G端末に自由視点の動画を配信する実験を紹介した
プロ野球の試合を16台のカメラでとらえ、球場内の5G端末に自由視点の動画を配信する実験を紹介した

 もう1つの例として、鉄道会社と組んで駅構内に設置した4Kカメラの映像をリアルタイムで伝送・収集し、刃物を持っているなど、容疑者の不審な動きを捉える実験を紹介した。ほかにも、踏切に車が進入していて、抜け出せないといったとき、カメラ映像から危険を察知して事故を防ぐといった用途もあるという。

 原田氏が「世の中が変わるのではないか」と期待をかけるのは低遅延の特徴を生かした用途。無人の建機を5G通信を通して遠隔操作すれば、遠隔地で高精細な映像を見ながら、あたかも現場にいるかのような感覚で、アームなどの微妙な操作ができる。東京にいながら、朝は沖縄、昼は東北、午後は関西と複数の現場を担当することが可能になり、少子高齢化による作業員の人手不足の解消につながる。医者が遠く離れた患者を遠隔で手術をするといった用途も考えられるという。

 多接続については、東京都内の小学校で実施した同時接続の実験を紹介。20人が無線LAN、別の20人が5Gで接続し、動画を同時にダウンロードしたところ、5Gは無線LANの5倍速いスピードで終了したという。多彩な通信機器と周波数を共有する無線LANと比べて「いろんな電波が飛んでいる工場でも5Gなら安定的な速度が出る」(原田氏)と展望した。